一度味を知ってしまえば、それからはもう止められなかった。

まるで飢えていたかのように、目の前の唇を貪る。

「…はっ、ん…!」

互いに空気も吸えないほどに、繰り返し繰り返し食む。

吸い付き過ぎて、満足した頃にはそこが麻痺して感覚がわからなくなっていた。

だがそれにも構わず、火がついた本能に沿って顔やら耳やら首筋やらを隅々まで味わっていく。

鎖骨に達したところで、他よりも少し強く噛んでみると腕の中の身体が震えた。

「…っあ…」

「………へぇ」

感じる場所が鎖骨とは、何とも珍しい。

というより、ただ単に触るのではなくつねったり爪を立てたり、少々刺激がある方が良いらしい。

(…なるほどな)

男相手が初めてだとはいえ、この辺りについては女とさほど変わらない。

付いているものの違いなら、土方さんの見た目と妖艶さで吹っ飛ばせるくらいだ。

だから雄の象徴を口に含むことだって、この人の唇から熱い吐息と聴覚を刺激する淫靡な喘ぎを出すことが出来るなら、実に簡単なことだった。

「…っん!さ…の、やっ…」

開かれた股に手を添えていたから、吸い上げたり軽く噛んだりした時に腿が震えているのが直ぐにわかった。

きつく口をすぼめれば普段とはうって変わった甲高い悲鳴と共に、口内に苦い味が広がる。

不味いだろうそれを飲み込んだ時には、流石に自分でも驚いた。

「…はぁ…左之…」

「疲れたか…?だが…俺は、あんたの中に入りてぇ」

「…左之」

上がった息を整える土方さんの耳元に、そっと囁く。

ついでに後ろに手を回して双丘をなぞり、秘部に人差し指を宛ててみる。

ふと、土方さんと目が合った。

「…一応聞いとく。嫌か…?」

酒と快楽で赤くなった頬を隠す様子もなく、ただぼんやりと俺の視線を受け止めている。

しかしやがて、右腕を目を覆うように顔に宛て、ぼそりと小さな声で呟いた。

「…今さら止めたら、承知しねぇ…」

「っ…、それ、すっげぇ殺し文句…!」

本人には自覚なんてないのだろうが、腕を外して開けた視界には恐らく収まっているだろう俺の息子が、立派に変化している様に顔中を真っ赤にしている。

色んな意味で堪らなくなって、目の前の身体を抱き締めた。



入るぜ…なんて端的で直球な単語を吐いて、解したそこに自身を沿える。

土方さんの吐瀉物で濡らし、何本か指を入れて馴らしたはずのそこは、それでも初めて受け入れるからかやはり狭いしきつい。

いてぇいてぇと泣く目尻に唇を寄せて必死に慰めながら、前に手をやってこれでもかと擦れば、少しずつだが先に進める状態にはなってきた。

「あ、う…」

「…大丈夫そうか…?」

「ん…」

なんとか同意を得たものの、やり過ぎて壊すなんてことが無いように出来るだけ優しくゆっくり腰を動かす。

普段は眉間に皺が寄るといつも般若みたいで怖いと思うこともあったが、今は悩ましい声音を吐いてのものだったから怖いどころか、まさしく…色っぽい。

優しくゆっくりなんて考えていたのは最初だけで、気がついた時には暴走していた。

「…ふ、あっ…く!あ、あっ…さっの…!」

「…はぁ、はぁ…たま…ねぇ…もっ…」

「ひっ…う、あぁぁあっ…!」

がたがたとスプリングを揺らし、最後に大きく身体を打ち付けて果てる。

頭の中は真っ白で、中に出してしまっただとか土方さんの出したものが盛大に飛び散っただとかはもう考えられない。

長距離走をしたのと同じなんて話をよく聞くが、まさしくそんな状態で息をするのも肺が痛くて辛かった。

しかしなぜか俺の身体は、俺の想像を越える兆しを見せる。

(ははっ…また、勃ってきやがった…)

三十代に差し掛かったはずの己の体力に、正直脱帽した。

確かに、最近めっきりご無沙汰だったのは事実だったが。

窺うようにちらと前方を見れば、俺と同じように肩で息をする身体がだらしなく横たわっている。

「…土方さん…」

どれだけまっても一向に盛り上がるだけの自身を苦く感じながら、駄目元で声をかけてみた。










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