あいうえお作文/え
拍手ありがとうございます!
お次は、え!
―――
『駅伝』
正月と言えば、初詣。
と言うことで、僕たちは近くの神社に来ていた。
「…で、何をお願いしたんですか?」
当然のようにお賽銭を入れて手を合わせて、数秒。
隣で僕と同じことをしていた土方さんに、場所を移しながら訊いてみた。
「そんなもん、決まってんだろ」
「あぁ、やっぱり」
きっと願い事は、僕と同じ。
そう思ったら、それなりに嬉しくなる。
ちなみに、僕のお願いは『今年も土方さんと楽しく仲良く過ごせますように』。
奮発して、いつもだったら五円玉のところを今日は五十円玉を投げてやった。
「えへへ」
「まぁ、どこも似たような願い事だろうな。定番みたいなもんだろ…あ、そうだ」
定番ですかね、そうですかね。
普通定番と言えば、きっと家内安全とか無病息災とかじゃないですかね。
「まさか、土方さん…」
ぬか喜びをさせた張本人を半目で睨むも、当の土方さんと言えば時計を見てハッとした顔をしていた。
「やべ、始まっちまう」
「…何がですか」
「駅伝だよ!悪いが先に帰る」
「…は?はぁ!?」
僕の渾身の叫びなど聴こえないかのように、颯爽と去っていく背中を眺めて唖然とする。
そんなに駅伝が見たいんですか、この僕を一人置いていく程に。
「土方さん!ちょっと土方さんってば!」
どんなに声を張り上げても、もうあの背中は人混みにまみれて見えなくなってしまって、届いたかどうかもわからないし多分届いてないだろう。
「…はぁ…」
まさか正月早々、しかも『楽しく仲良く過ごしたい』なんて願った早々に、その願いは砕け散る羽目に陥るなんて。
先が思いやられる、っていうか今年は駄目な気がする。
「知らなかった…。土方さんが駅伝好きなんて」
新しい発見なんて喜んでいられる余裕もなく、僕は一人で来た道を戻った。
―――駅伝なんて、滅びてしまえ!
―――
おめでとうございます。
あと、駅伝に恨みはありませんので悪しからず。
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