「こちらです」
案内をしてくれた女性はとある部屋の前で止まる。
「入院手続き等御座いますので、お時間が出来ましたらあそこに見えますナースステーションへ声を掛けてください。それでは失礼致します」
ペコリとお辞儀をしたあと、女性は自分の持ち場へと戻って行った。
「…此処に小十郎さんが」
俺様は一度深呼吸をしてから、恐る恐る扉に手を掛ける。
この扉を開けたら、色々な管やコードに繋がれた小十郎さんが居るのかと思うと凄く怖い。
だけど…。
意を決し扉を開ける。
軽い力で開く扉のその奥には、俺様が思っていた様な管やコードは無く、真っ白なベッドに静かに寝ている小十郎さんの姿だった。
「小十郎さんっ」
そんな小十郎さんを見るなり、俺様の体から力が抜けて行くのを感じる。
俺様はベッドの横に置いてある椅子へと行き、腰掛ける。
「…佐助か?」
椅子の軋む僅かな音で小十郎さんが気付き、俺様の方を見る。
小十郎さんの頭には白い包帯が何十にも巻かれている。
「小十郎さん、大丈夫?痛いところ無い?お医者さん呼ぶ?」
「いや、大丈夫だ。すまねぇ、心配掛けたな」
ぽふっと俺様の頭に小十郎さんの手が置かれる。
その手には細かな傷が見受けられた。
「事故に巻き込まれたって聞いたけど、本当に大丈夫なの?」
頭に置かれた小十郎さんの手を取って、ギュッと握る。
軽く握り返される手の温もりを感じながら、次第に俺様の心は落ち着く。
小十郎さんは横になりながらこれ迄の事を教えてくれた。
何でもスリップした車をギリギリで避けたまでは良いが避けた衝撃で頭を強打、そして、そのまま気を失ったと言うことだった。
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