細かな傷はその時に出来た物で、命に別状は一切無いとの事。
入院も頭を打ったって事で検査のための入院らしい。
明後日には退院出来ると言うのがお医者さんの話しらしい。

「さ、佐助…?」

小十郎さんから全てを聞き終えた瞬間、俺様は脱力感の為小十郎さんの上に覆いかぶさる様に倒れる。

「事故に巻き込まれたって聞いたからさ、俺様てっきり小十郎さんが大怪我して運ばれたんだと…」

「警察の人もその辺はちゃんと言っている筈だが…」

「それは分かってるっ。だけど…小十郎さんに何かあったらって思ったら聞こえなくなって…」

布団をぎゅっと握り込む。
そんな俺様の髪を小十郎さんが優しく撫で付ける。

「済まなかった。…俺はお前を残して何処かに行くことは絶対にしない。約束する」

だから泣くな、と言う小十郎さんに俺様は「泣いてない」って返しながらもワンワン泣き付くのであった。





「あ、俺様ナースステーションに行ってくるね」

入院の手続きをしてくると言って病室を出る。

この歳になって大泣きするとは思ってもいなかったけどちょっとだけすっきりした。

だけど今思えば小十郎さんに泣き付くなんて少し恥ずかしかったかも…。

それでも泣き止むまで小十郎さんはその大きくて温かな手で俺様の髪を撫で続けてくれたのには嬉しかった。

この温もりが何時かは無くなるなんて事は分かっているけど、それが遥か先の事だと思いたい。

そして、それが無くなるその時は俺様も一緒に…。



ふと気付くと俺様はそんな事を考えていた。

恥ずかしいと自覚した瞬間、一気に顔が赤くなる。

まだ結婚もしてないのに、その先の事を思い浮かべるなんて。
俺様は赤くなった顔を見られないように、近くにあった見舞い客用の椅子に腰掛ける。



椅子には誰も座ってはおらず、また景色が見れいるように外に向けられているお陰で誰にも見られる事なく顔色を戻すことが出来た。


それでも、そんな未来も悪くないかなと思ってしまう俺様も居たり。
赤面は治ったけど、まだほてりが残る頬で俺様は入院の手続きをするべくナースステーションへと足を向けるのであった。







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