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赤い光が部屋中を舞い外へと出ていく。

生命戦維の状態の私は何も出来ずその場に佇んでいた。
私のせいで、元の世界が、滅んでしまう。

とてつもない罪悪感とどうしようもない絶望感。

身体のない自分はこの状況を見る事しか出来ずただただ謝った。
出したくても出ない涙、出したくても出ない声。
ただひたすら心の中で謝るしか出来なかった。





53





暫くそうしていて、私は自分の意識が薄れていく事に気づく。
薄れていくというのはおかしいかもしれない。
これは、まるで別の意志が私の中に侵略してくるような、乗っ取られていくような。

直ぐに悟る。
侵略してきたのは生命戦維なのだと。
ああやって私は、最後には自分の意識さえもアイツらに乗っ取られてしまうのだと。
人間として死ぬのだと。

そう、私はもう人間ではないのだ。
生命戦維の養分ではない。
生命戦維そのものなのだ。










それは何て幸福な事なのだろうか。










不思議と違和感がなくなっていた。
自分も生命戦維である事、それを自然に幸福に思いはじめていた。
これが生命戦維に乗っとられるという事なのだろうか。
この心地良さが、この喜びが。
渇いた砂漠が恵みの雨によって満たされていくようなこの充実感。
真っ青な空を一筋の雲が真っ二つに切り裂くその爽快感。

これを、私だけが味わって良いのだろうか。


-------------。


意志が飛び込んでくる。

そうだよね。
色んな人に教えてあげなければ。

この喜び。この快楽。味わう事が出来ないなんて勿体無い。
もう、もう良い。もう良いんだ。
もう謝るのはやめるんだ。
この喜びを皆に。皆に教えて許して貰おう。

きっとみんな喜んでくれる。
きっと、大丈夫、許してくれる。

だから、だかラ。
オネガイーー。








「いつまでも勝手やってんじゃねぇええ!!」








怒号と爆発音が聞こえた。
それは普通のものじゃない。
私を友達と呼んでくれた大事な人の怒号だった。


「よくもこんな服を押し付けやがったなぁぁあ!!!!」



薄れかけた、壊れかけた意識。
わずかに聞こえた音の元であるテレビへと意識を移す。
ゆらりと身体をテレビの前に移動させ、画面を見た。



「もう、ごめんだ…!!!!もう!!!!ごめんだ!!!!!!!」


ブチブチブチと流子ちゃんが己の身体から純潔を生命戦維を引き剥がす音。
それと共に吹き出す血。
手があれば目を覆う光景。



「止せ!纏!!無理に引き剥がすと死ぬぞ!!!!」



あまりの悲惨な光景に皐月様も大声で止める。
私もきっと止めるであろうその光景。
尚もブチブチブチと音がやまない。



「死んでいいんだよ!!!!!!!!死んでも脱がなきゃいけねぇんだよ!!!!!!」



最後に一際ブチンと大きな音を立てて流子ちゃんが全てを脱ぎ捨てた。
尋常じゃない血の雨があの時のように地面に降り注ぐ。
皮膚ごと引きちぎった流子ちゃんの身体は真っ赤でボロボロで痛々しい。
それでもしっかりと両足で立っていつもの強い瞳でこちらを見ていた。




「じゃなきゃ、また鮮血は着られないだろうが」




降り注ぐ赤が、私の意識を少しだけ呼び戻した。