となりの席の竜ヶ崎くん


入学式の日、クラス分けをチェックし、下駄箱に靴を入れてから教室へ向かった。

教室にはもう既に何人かクラスメイトがいて、自己紹介をしたり適当に席に座ってすごしているようだ。


「これ、席って決まってるのかな?」
近くにいた女の子に話かけた。
「ううん。自由みたいだよ!あ、これからよろしくね!」
「そうなんだ、ありがとう!こちらこそよろしく」
少し会話をして、私の隣にしない?なんて誘われ、特に断る理由もなかったので彼女、アリサちゃんの隣の席になった。

やることもなくぼんやりしていたら、アリサちゃんとは反対側の隣の席に男の子が座った。見た感じ、勉強できる優等生です!とでもいったような雰囲気だ。赤ブチ眼鏡...何気にオシャレさんなのか?

HRでの自己紹介で彼は竜ヶ崎怜くんだということがわかった。声は思っていたよりも高いかもしれない。でもやはり、それなりにはイケメンなんじゃないだろうか?多分...




数日後、竜ヶ崎くんは陸上部に入ったらしいとアリサちゃんから聞いた。
調度その頃から、授業の合間の休み時間になると隣から呪文みたいな話し声が聞こえてくるようになったのだ。アリサちゃんとは反対側から聞こえてくる訳だから、呪文を唱えているのがそれなりにイケメンの竜ヶ崎くんだと分かるのにそう時間はかからない。具体的にどんなことを唱えているのだろう...?ふと疑問が浮かんだものだから、耳をすませて聞いてみた。

んん...?上手く聞き取れない...何かぼそぼそ言っているのは分かる。角度??え、本当に謎だ。

気になりすぎて思い切って話しかけてみることにした。

「ねぇ、竜ヶ崎くん。ちょっといいかな?」
「有坂さん?別に構いませんが...どうかしました?」
「いやぁ...特に重要な話ってわけじゃないんだけどさ、その、いつも何の呪文唱えてるのかなってさ」
「呪文?何をいってるんですか?僕は理論を覚えているだけですよ、呪文なんて唱えてません!」
「え、でもさっきからぼそぼそ呪文...」
「ですから、それは僕が理論を覚えるために呟いていただけです」
「ふーん...で、棒高跳び?だっけ?」
「貴女から聞いてきたのに...ええ、そうです、棒高跳びです。で、それがどうかしたんですか?」
「え?別に何となくだよ!」
笑顔でそう答えれば、なんだか面倒くさそうに溜息をつかれてしまった。いや、まぁこれは私が悪いんだろうね、うん。

放課後の下校途中、何となくグラウンドを眺めていると竜ヶ崎くんがいるでわないか。そういえば、実際に跳んでるところ見たことないかも...!そう思ってグラウンドの方へ足を進めた。

「あれ?葉月くん?」
「あっれー詩乃ちゃん!?どうしたの?」
「竜ヶ崎くんの棒高跳びみてみようかなぁなんて。葉月くんは?」
「へぇ、そうなんだ。僕?僕はね、怜ちゃんに水泳部に入ってもらいたいんだ!」
「そういえば、葉月くん水泳部つくったんだっけ?部員足りないの?」
「うん!ハルちゃんたちと!そうなんだよねー、部員足りなくてさ、あと1人欲しくて、怜ちゃんがいいなぁって」
そう葉月くんが指をさす方向を見ると、水泳部の先輩であろう人と目が合い、軽く会釈をした。
「どうして竜ヶ崎くんがいいの?」
そう、それだ。どうして葉月くんは竜ヶ崎くんにこだわる必要があるのだろう...?
「ん?あ!怜ちゃんね、僕たちと同じなんだ!!」
「一緒って?」
「女の子みたいな名前!」
「なるほど...」
そ、そんな理由かぁ...でもなんか良いね。竜ヶ崎くん水泳部に入ればいいのに。


「あ、跳ぶみたいだよ」
わぁ、フォーム綺麗...凄い!竜ヶ崎くん凄い...!

ドクンドクン...鼓動が高鳴る...

スポーツを観て、こんなに綺麗と思ったことなんてなかったから余計にドキドキした。



竜ヶ崎くんは葉月くんの押しに負けて水泳部に入部したらしい。
またもや、アリサちゃんからの情報である。

「竜ヶ崎くん!」
「あ、有坂さん、どうかしました?」
「今度は水泳部に入部したの?」
「ええ、いけませんか?」
「ううん。ただ、棒高跳びも綺麗だったのになぁって」
「えええっ!?いきなりどうしたんですか!?」
そんなに驚くこと?
「竜ヶ崎くんって、結構失礼だよね」
笑顔でそう言う。
「す、すみません」
あら、素直。ちょっと調子が狂うなぁ...

「でも、きっと、竜ヶ崎くんは水泳のフォーム綺麗だろうね」
「なんですか、急に」
意外と照れ屋?それなりにイケメンなのに褒められなれてないのかな?


「ねぇ?私も入部しようかな、水泳部」
「はっ?」
「え、ダメ?マネージャー、松岡さんもいたし、私も入ったって良くない?」
「そういう問題ではなくてですね、どういう動機なんですか?」
「なになに?詩乃ちゃんも水泳部入ってくれるの?」
「うん!」
「ホント!?やったね!怜ちゃん!部員増えたー!」
「ちょっと待ってください、渚くん!」
ええ?って葉月くんが首をかしげる。え、名前呼びだし、もしかしてこの2人付き合って...なわけ無いよね。いいなぁ、男の子同士はすぐに打ち解けて。


「ねぇ、私入るよ!水泳部!竜ヶ崎くんの泳ぎ見たいし!」
「だぁーってさ、怜ちゃん!」
「もう、勝手にしてください...」
真っ赤な顔の竜ヶ崎くん。
私と葉月くんはイエーイと笑顔でハイタッチ。


これから楽しくなりそうだ。

この先にどんな楽しいことが待っているのだろう。




となりの席の彼に恋心を持ったと自覚するのは、まだ、ずっと先のお話である。



高校生活はまだ始まったばかり、エンジョイしようではないか!





END.







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