かいようせいぶつとわたし | ナノ


春ノ不調〜シャチside〜

凛がオーストラリアに留学してから、毎年この季節になると紀紗の様子がおかしくなる。

おかしいっていうか、ぼんやりしてるって言った方が正しいかな。普段も特別騒がしい方ではないけど、なんていうか...元気がないんだよね。
昔は、困ったことがあればすぐに俺やハルに相談してきてたのに、中学2年くらいから心配かけまいとして相談してくることが少なくなったからなぁ...


凛...凛は紀紗が今こうなっている理由を知ってるのかな?

辛い悩みとかじゃないといいんだけど...
昨日もぼんやりしていたし、明日は迎えに来なくても大丈夫って言ってたけど心配だなぁ...



翌朝、ハルの家に行くと玄関の前で紀紗が立っていた。

「おはよ、紀紗。今日はちゃんと起きれたんだね」
「真琴っ!もう、ちゃんと大丈夫って言ったでしょう?過保護なんだから!」

元気に振舞ってるけど、多分空元気かな?

「紀紗。1人で悩まないで、何かあれば昔みたいに相談してきなよ?」
「え、う、うん」

随分と驚いた顔をしていてなんだかおかしくなる。

「ま、とりあえずハル学校に連れてかなきゃね」
「そうだね!またお風呂に居るのかな?」

走ってハル探しにいく紀紗を見た限り、相談してくれるのはまだ先かな?なんて考えるあたり俺も本当に過保護だなと思う。


「ハールー!またお風呂に居た!真琴ーっ!早くー!私じゃ中は入れないぃいい」
「今行く!」

ハルの家のお風呂場の前にたどり着くと、紀紗が俺の背中を押して急かしてきた。はいはいと紀紗の頭を撫でてからお風呂場へ向かう。

「開けるよー」

扉を開けた瞬間、バシャッという水音と同時にハルが浴槽から顔を上げたようだった。水気を切るように左右に首をふっている。

「おはよ、ハルちゃん」
「だから、ちゃん付けはやめろって」

なんて言いつつも、差し出した俺の手を掴んで立ち上がる。

「また水着着て入ってたの?」
「ほっとけ、遅刻するぞ」
「それ、俺の台詞...」

ハルは相変わらずだなぁ...


「ハル!おはよー!今日は学校行くよね?」
「紀紗...あぁ、行く。朝飯の鯖焼くから手伝え」
「うん!」

ん?朝飯...?鯖!?
台所に行ってみれば水着にエプロンで鯖を焼いているハルがいた。
なんで焼いてるのかと問いただせば、朝飯まだ食ってないからって...水着にエプロンも、水着に油が飛ぶのが嫌なだけみたいだし。もうちょっと寒さとか気にしないと体調悪くしたらどうするんだよ、もう。

「ハルー、パン焼けたよー」

チンッというトースターの音とほぼ同時に紀紗が笑顔でそれを伝えた。

「ねぇーハル、お皿どこ?」
「そこの棚」
「あー、あった!」

紀紗が皿にパンをのせてハルに渡すと、鯖と食パンを一緒に食していた。本当に鯖ならなんでもいいのかなと思うほど、ハルは鯖ばかり食べている。





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