かいようせいぶつとわたし | ナノ


ソレイユとの再会

「いいなぁ、ハルちゃん今1人暮らしなんだぁ」
「おばさん、単身赴任のおじさんのところだって」

「ハル、鯖美味しそうだね!ね?私も食べていいの??」
「ああ」

真琴と渚くんが話をしているうちに、ハルが鯖を焼いていたから私はそっちにくいついた。鯖美味しいよね、鯖。朝、ハルが食べているの見てすっごく食べたかったんだよね。

「...また、鯖...」
「嫌なら食うな」
「美味しそう、ハルちゃん料理上手だったもんね」

これは...渚くん、気をつかっているのだろうか?

「でもさ、本当にいいのかな...?」

ドクン...

「うぇえ!?さっきは賛成したのに?ひょっとして恐くなった?」
「違うよ、俺たちだけで掘っちゃっていいのかなってこと...」

ドクン...
真琴の言葉に鼓動が大きく跳ねた。

「それは、仕方ないよ、凛ちゃんは日本にいないんだし...」


そう、凛ちゃんは日本に居ない。
あの大会が終わった翌日にオーストラリアに留学したから。

それから、彼のことを考えると心がざわつくようになった。会えるのなら、会いたい。今まで話が出来なかった分、沢山話をしたい。聞きたいこともあるし...。


ハルが焼いてくれた鯖を食べて、外が薄暗くなった頃、私たちは小学生の時通っていたスイミングクラブへ向かった。


「結構、荒れてるね...」

古い建物だし、そして夜で暗いせいかスイミングクラブはまるでお化け屋敷のようだ。

「はい、これ一応。お清めの塩」
「塩?」
「実はここ、出るらしいんだ」
「脅かすなよ...」
「ホントだよ!この間も影が動くのが見えたとか、すすり泣く声が聞こえたとか...」

へ、へぇ...真琴の顔が引きつっていく。とはいえ、そんなことを思っている私も恐い訳で...どうしよう...
そんな私たちをよそに、渚くんはお清めの塩を私、真琴、ハルの順にふりかけてくる。

「おい!」

かけられた塩を舐めてハルはこう言った。

「これ、塩じゃなくて砂糖」

ちょっとどうでもいいけど、でも重要なこと。これじゃ、お清めにならない...


「まぁ、こういうのって気持ちの問題だし、塩でも砂糖でもどっちでもいいよね」

良くない、良くないよ渚くん。これじゃ、お清めにならないんだってば...

「ベタ過ぎ...」
「ボケとしては古典的過ぎるよね...はは...」

カランッ

「うえええっ!?何!?」

真琴がハルの背中に抱きついた。私は真琴の声にびっくりしたよ...こうなると真琴は凄く頼りにならない。

「あぁ...空き缶蹴飛ばしちゃった」
「お前...わざとやってるだろっっ!!」

ビクッ...
真琴、声大き過ぎだよ。もう嫌だ...びっくりするこっちの身にもなってよ...
もうほぼ涙目の状態でみんなに着いて行く。

「紀紗、大丈夫か?」
「ハ、ハル...大丈夫じゃないよ。真琴の声大きいし、渚くん空き缶蹴飛ばすし...心臓もたない」

フッと笑った後、ハルは私の手を握ってくれた。

「うわぁ、懐かしい」
「中は思ったより荒れてないね」
「ここは...」
「休憩室だ...」
「はやくはやく!」

先を行く渚くんが私たちを呼ぶ。

「見て見て!これ、僕たちがリレーで優勝した時の写真!」

覗き込むとあの時の写真が飾られていた。みんな、笑っている。何故だかリレーに出ていない私も一緒に撮ったんだよね。
トロフィーもみんなでとったものだから誰か1人が持って帰るのはおかしい、タイムカプセルにして大人になったら掘り起こそうって...凛ちゃんが言ってたんだよね。

「ハルッ!紀紗っ!行くよ!」

真琴に呼ばれてハッとした。ハルもってことは、ハルも思い出してたのだろうか?

「目印、ちゃんと残ってるかなぁ」
「もうちょっと急ごうよー...うっ」

真琴が何かに気づいたのか、ハルの服を引っ張る。ハルと手を繋いでいる私も間接的に足を止めることになった。

「真琴?どうしたの?」
視線の先を見れば、黒い人影。誰かがこっちに向かってきているのが分かった。

「ひっ!!!」

真琴の声の数秒後くらいに、黒い人影、帽子を被った少年が顔を上げる。

「よう」

帽子を被った少年は私たちに話しかけてきた。まるで、私たちを知っているかのように。

「誰?」
「わかんないよ」
「まさか、ここでお前等と会っちまうとはな」

その言葉を言いながら、彼は帽子の後ろをパチンとさせた。
蘇る記憶。ゴーグルの後ろのゴムをパチンとさせる仕草。そんなことしていたのはあの人しかいない。

「凛ちゃん...」
「凛!!」
「凛ちゃん!!」


3人とも殆ど同時だった。




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