▼ 暖かい人
「翔くんっ…!!」
「どわっ…!って彼方か、どうした?」
藍せ…くんと別れてから直ぐ様翔くんの元へ走ってきた私。確か、今日はオフだって言っていた気がしたから。
「翔くんっ…翔くんっ!私…き、キャパオーバーだよう」
顔を合わせた後、直ぐに抱きついて泣き出した私に驚きながらも、よしよしと頭を撫でてくれる。
「キャパオーバーって、誰かに何か言われたのか?」
翔くんは宥める様に聞いてくる。優しい声色に安心する。コクンと首を縦に振ってから、さっきまでの出来事を話した。
「藍が、ねぇ…彼方はどうしたいんだ?まぁ、それが分からないから俺のところに来たんだろうけどさ」
「翔くん凄い!翔くんは私の気持ち分かっちゃうんだね」
「お前は分かりやす過ぎんだよ!俺以外の奴にもよく言われんだろ?」
言われてみればそうかも知れない…。私ってそんなに分かりやすいのかな。恥ずかしい。
「翔くんはどうしたら良いと思う?」
「それは彼方次第だな。藍は名前で呼ぶってことで丸く収まってるんだろ?そんな焦らなくても大丈夫だって!もし誰かと付き合うことにしても、お前が決めたことなら誰もお前を責めたりしない」
「う、うん」
少し俯いた状態で返事をすれば、額にコツンと翔くんの額がぶつかった。
「バーカ、そんな顔をすんなって!もし皆がお前を責めても俺は絶対味方で居てやるからさ!」
二カッと笑う翔くん。翔くんはあったかいな。いつも助けてくれて、相談のってくれて、お兄ちゃんみたいだ。
「翔くんだいすき」
「ったく、手の掛かる妹だな、お前は」
翔くんが元気付けてくれたから、今は何だか前向きかも知れない。ちゃんと考えよう。これからのことをちゃんと。
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