▼ 確信犯とは誰か〜ai side〜
カナタがランマルのことを好きなことは、大分前から気づいていた。僕が、というよりも周りの皆も気づいていたと思う。少なくとも、僕とレイジとトキヤとレンとショウは確実にね。恐らくは、ランマルも大分早いうちに気づいてたんじゃないかな。それで、気持ちに応えるつもりも無いのに優しくするとか、タチが悪いよね。確信犯、最低だよ。
「カナタ、ランマルのこともう諦めた方が良いと思う。ランマルにはハルカが居るし、多分ランマルはハルカを裏切れない」
「…藍先輩、私はそれでも蘭丸先輩が好き…です。諦めた方が良いのは分かってます、私が好きでいたら蘭丸先輩にも春歌先輩にも迷惑をかけてしまうかも知れない…。でも…好きな気持ちの消し方が、私には分かりません……」
必死な顔。カナタの本心なんだと直ぐに分かる。本当にカナタはランマルのことが好きなんだね。なんか悔しい。
「そうかもね。特にカナタは自分の気持ちに素直だから、難しいかも知れない」
「私…どうしたら…迷惑かけないですみますか…?……き、嫌われたくない、です…」
内心、そう聞かれるのを待ってた。
「…じゃあさ、僕と付き合わない?」
一瞬見開いた後、彼女の瞳が揺らぐ。もう一押しかな、なんて冷静に考える僕をカナタが知ったら怒るだろうか。でも、やっぱり、と彼女が言葉を紡ぐ前に僕は言葉を重ねる。
「カナタは本当に分かりやすい。付き合わなくて良いから、今日から僕のこと名前で呼んで。実際、歳も一つしか変わらないんだし」
「えっと…あ、藍くん…?」
馴れない呼び方で頬を染めながら、僕の名前を呼ぶ姿が可愛い。
「はぁ、まぁ、今はまだそれで良いよ。今は、ね…」
人差し指を立てて口元に添えて言ってやれば、カナタの顔は更に紅く染まり、戸惑いを隠せないと言った表情になった。
確信犯とは誰か、それはもしかしたら僕かもね。
嗚呼、僕も最低だ。
prev / next