▼ 初恋の終り
好き、なの……
本当に好き。貴方が好き。
このたった二文字を言うことさえ貴方の前では困難で、目を見て話すことすら緊張してしまう。
どうすれば貴方に伝わりますか?伝えられますか?
そんなことを想い続けて、はや一年。気がつけば貴方には恋人が出来ていた。悲しいとかショックだとも思ったけれど、それ以上に私の行動力の無さに呆れるしかなかった。嗚呼、やっぱりこうなった…と、ただただ現実を受け入れることしか出来なかった。
それでも、私にしては頑張った方だったりもする。先輩後輩としての関係でだけど前よりはずっと話せるようになったのだから。
「よう」
「あ、蘭丸先輩おはようございます。えっと、その、あの…」
蘭丸先輩はフッと息を零すように笑うと言葉に詰まる私の頭の上にポンッと手を置いた。
「え…?」
「別に結婚したとかってワケじゃねぇんだからよ、そんな畏んな」
「…は、はい」
「お前はいつも通りでいろ!」
そう言い、もう一度頭をポンッと軽く叩いてから蘭丸先輩はお仕事へ向かった。
嗚呼、やっぱり好きだ。蘭丸先輩が好き。でも、やっぱり私は伝えられない。蘭丸先輩の恋人、春歌先輩も私にとって大切で大好きな人だから、二人の幸せに割り込むことなんてしたくない。
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