金髪と眼鏡と食べ物と
今日のお弁当のデザートは大好きなオレンジなんだよね。それに、さっき買ったオレンジジュースもある。オレンジ尽くし。
「んー、美味しい」
「坂下さん、オレンジ好きなの?」
「うん!大好き!」
笑顔でそう告げれば、橘くんは少し頬を染めていた。
「え、橘くんは何が好きなの?」
「俺はグリーンカレーと、チョコレートかな」
「ぐりーんかれー?それって普通のカレーと違うの?」
「グリーンカレーはタイ料理なんだよ。ココナッツミルクとか入ってたりするんだ」
「タイ料理か。食べたことないなぁ。あ、チョコは私も好きだよ」
「何の話?好きな食べ物??僕はねー、イチゴのショートケーキが好きなんだ!」
「葉月くん女子力高い...!」
「えー?そうかなぁ?あ、ハルちゃんは?」
葉月くんに話をふられた七瀬くんは、一瞬目を見開いて「ない」とだけ呟いた。好きな食べ物がないのだろうか?それとも女子力のことと勘違いしてるとか?
「七瀬くん、好きな食べ物ないの?」
「食べ物、鯖が好きだ」
やっぱり女子力のことだと思ってたみたいだね。
「鯖、身体にいいもんね」
「ああ」
「ハルは毎日鯖ばかり食べてるんだよ」
「そうなんだ!あ、橘くんと七瀬くんは幼馴染なんだっけ?」
「うん。あ、そういえば怜は何が好きなんだ?」
橘くんが問いかけると竜ヶ崎くんは眼鏡をクイッと上げてにやりと笑った。
「僕ですか?僕はお寿司が好きですね。あれは美しい...僕にぴったりの料理だ...!」
「怜ちゃん、何言ってるの?」
「いいですか!渚くんお寿司というのはですね!」
竜ヶ崎くんがお寿司の魅力について語り始めた。余程お寿司が好きなんだろうなぁ、なんてぼんやりと思っていた矢先、葉月くんが制していた。
「はいはい、怜ちゃん分かったから、ストップ!!」
葉月くんに止められ少し不服そうな顔をした竜ヶ崎くん。数秒後、自分で少し暴走してたのを自覚したらしく、小さい声ですみませんと呟いた。
気にしないようにと竜ヶ崎くんを励ます私をよそに、葉月くんは愛美に絡んでいた。愛美はものすごく嫌そうな顔をしているけれど、入っていくのはなんだか気が進まない。
「ねぇねぇ?愛美ちゃんは何が好きなの?あ!レモンティー?」
「は!?なんでよ!?」
「今、飲んでるじゃない?」
「これは別に、そういうんじゃない...!」
「そっかぁ、レモンティーね!」
勝手に決めるなとムスッとした表情になる愛美と対象的な笑顔の葉月くん。こんなにもペースを崩される愛美を見たのはいつぶりだろうか。
「お前、嫌い...!私はくるみの付き添いで来ただけで、お前と絡むつもりなんてない」
「えー、そんなこと言わないでさ、仲良くしようよー」
キーンコーンカーンコーン
タイミングが良いのか悪いのか、お昼休み終了のチャイムが鳴り響き、この何とも言えない雰囲気で初めての屋上でのお昼休みは幕を閉じた。
愛美と葉月くんとの間にもこれから何かありそうなそんな予感がした。
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