「俺には二つ名って無いんですか?」
特訓の休憩中、いきなりリンクから質問が飛んできた。
「二つ名……って何?」
「ほら、先代は“時の勇者“って呼ばれてるじゃないですか。アレです」
「ああ、アレか」
あまり深く考えたことも無かった。知らないうちにそう呼ばれるようになってたから。誰が言い始めたんだっけ? ……まあいいや。
「付けるとすれば……光とか黄昏とか、その辺じゃないかな」
適当に挙げてみたけど、僕にはこういうセンスが無いから言っておきながら少し恥ずかしくなる。どうせなら女神が適当に決めておいてくれればいいのに。
僕の場合は単純に時を渡ってたから時の勇者になったんだろうけど、リンクの場合は象徴するものが沢山あるから難しい。誰が見てもぱっと分かるのは狼だと思うけど、狼の勇者……なんかしっくり来ないなあ。
「先代……俺、“黄昏の勇者“が良いです」
うんうん悩んでいたら、何故か目を輝かせながらリンクがそう答えた。
「え、僕が適当に考えたやつでいいの?」
「勿論です! 光も良いけど黄昏のほうがダークな雰囲気あって格好良いですよね」
「そうかな……」
正直リンクのセンスは良く分からない。僕が水の神殿でダークと初めて出会った話にかなり食い付いてきたあたり、影とか闇とかそういうのに心がくすぐられやすいのかなとは思っていたけれど。でも本人が気に入ったならそれでいいか。
「先代、これから俺のこと黄昏の勇者って呼んでくれませんか?」
「……最終奥義まで習得できたらね」
「ほんとですか! 頑張ります!」
まあ、これでやる気が出てくれるなら構わないかな。でも黄昏の勇者って毎回言うのは長い気がするし……どうしようか。
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