最近、不思議なくらい魔力がぐんぐん回復する。この前リンクくんに会うのに結構力を使ったのに、三日経った今でもう全快に近いくらいに回復した。一週間はかかると思っていたのに。
そしてこのことをリンクに言ってみたら、何故かリンクも妙な調子の良さを感じていたらしい。
「もしかしてあの子が関係してる? 最近僕達に共通して起きたことっていうと、それ位しか思い浮かばないけど」
「可能性は高そうですね。約束より早いですが、様子を見てみましょうか」
***
「あっ、二人とも来てくれたんだ!」
リンクくんは私達が家の前に姿を現した瞬間、目を輝かせて家の中から飛び出してきた。初めて会った時もそうだったけど、リンクくんはきっと私達の気配を感じ取れるんだろうな。リンクくんに手を振ったら元気に振り返してくれた。かわいい。
「見て見て! お兄ちゃんとお姉ちゃんのために作ったんだよ」
家の中に招かれ、リンクくんが私達に見せるのは木箱の上にこぢんまりと作られた祭壇。手のひらサイズの石が二つ並べて置かれ、その前に野の花とお水がお供えされている。
「ご先祖様のお家ってこんな感じでいいんだよね? 俺、色々調べたんだ! 今は置いてないけど、ご飯の時間になったら食べ物もお供えしてるんだよ」
「っ、リンクくん……!」
感激で涙が込み上げそうになる。そうか、これが理由だったんだ。リンクくんが私達の為に頑張ってくれたから。確かに今の私達ならこれで沢山力を貰える。
にこにこと天使のような笑顔を向けてくれるリンクくんが健気で愛おしくて。思わずぎゅっと抱き締めた腕はリンクくんを通り抜けた。触ってあげられなかったけれど、それでも嬉しかったのか少し照れた顔で抱き締め返す仕草をしてくれた。
「あれ? この本……」
ふと、私の後ろに居たリンクが驚いたような声を上げた。つられて私もリンクの方に顔を向ける。
「あ、お兄ちゃんもその本知ってるの? 勇者様かっこいいよね!」
「え、ああ、うん……」
動揺するリンクの視線の先にある本を見て私も驚く。見間違える筈がない、あれは生前私達が書いた本。無事にリンクくんの手元に巡ってきてくれたんだ。私がかけた魔法も解けていないようで、あれから百年以上経った今でも綺麗な状態を保っている。
「俺も勇者様みたいになりたくて、モイさんに剣を習ってるところなんだ!」
得意気な顔で剣を振る真似をするリンクくんと、照れ臭そうに頭を掻くリンクを見て安心した。この時代にもリンクの成し得たことを知っている人がいる。その事実に胸が踊るような気分になった。
「……リンクくん、私達しばらくここに居てもいいですか?」
「ナズナ!?」
「えっ、本当!? もちろんだよ!」
私の提案に目を輝かせるリンクくん。やったやったとはしゃぐ彼を背に、リンクが私に耳打ちする。
「大丈夫なの? 僕は全然構わないけどナズナの体力が……」
「大丈夫ですよ。リンクくんのお供えのお陰か、こっちに来てから凄く調子が良いんです」
「それなら良いけど……無理はしないでね」
「はい。今の所ネール様からお叱りもないですし。時期が来たら、リンクもリンクくんに奥義を教えてあげて下さいね」
「うん。ありがと、ナズナ」
リンクくんには感謝しかない。リンクのことを知っていてくれて、しかも憧れまで抱いてくれているのだから。
俄然やる気が出てきた。リンクくんが勇者として目覚めるまで、側で見守ってあげよう。彼の左手に浮かぶ聖三角の紋章を見てそう心に決めた。
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