最近リンクがずっとトアル村という場所に住んでいるリンクくんのことを気にしている。
 リンクの気持ちは私にも分かる。きっと心配なんだ。あの子は、近い将来必ず勇者としての運命を背負うことになるから。リンクがそうであったように。

「……ねえナズナ、」

 そわそわとリンクが控えめに私に声を掛けた。続く言葉は言われなくても分かる。リンクくんを見たいんだ。でも、最近ちょっと干渉が多いから控えたほうが良い気がする。

「またリンクくんの覗き見ですか? 気持ちは分かりますが、あまり肩入れし過ぎるのも良くないですよ。私達はもうあちらの世界の者ではないのですから」
「う……分かってるけどさ。あいつ、そろそろ僕が旅を始めた頃と同じくらいの年齢になるから……」

 リンクは気まずそうに視線を逸らす。私だってこう言うのは心苦しい。私もこの立場じゃなかったら、きっとリンクと同じことをするから。
 あの子に訪れるであろう過酷な運命に立ち向かう為の手助けをしてあげたいと思うことは、当然の感情だと思う。でも私達が今生きている人達の運命を変える手助けをすることは……許されるのだろうか。


「……ナズナ、正直言うと僕は神様が嫌いだよ」
「えっ!? な、何言い出すんですか急に!」

 唐突に変なことを言い始めたリンクの口を慌てて塞ぐ。ネール様に聞こえてたらどうするの、と目で訴えても知らん顔のリンクは私の手をどかしてまた話し始めた。

「だって命を掛けて勇者としての使命を果たした僕を、神様は救ってくれなかったでしょ? もしナズナに出会えなかったら、死んでからも未練でずっと現世を彷徨ってたかもしれない」
「っ、リンク……」
「神様が勇者を助けてくれないんだから、僕達が助けてあげてもいいんじゃないかな。あの子に僕と同じ思いはさせたくない」

 勇者としての苦悩が分かるのは、同じく勇者だったリンクだけだ。あの子がどんな気持ちでハイラルを救うことになるのか、きっと私には分からない。でもどうか幸せであってほしいと心からそう願っている。
 ……そうだ。"最初の私"も、そう願っていたじゃないか。

「……そうですね。でも、もし怒られるようなことになったら一緒に謝って下さいね?」
「当たり前だよ。僕が言い出したんだから」

 二人揃って笑い合う。
 きっとこの世界にも"私"が居て、いつかあの子と出会うんだろうな。それまでは私達が幸せを与えてあげても……いいよね。私達二人の大切な子孫なのだから。

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