今日 行われた弓術大会で また優勝した
村では 僕の連勝記録の話で持ち切りだ
ぶっちぎりの成績と新記録の樹立
リト族の誇りとも讃えられ 悪い気はしない
族長から 優勝の褒美を聞かれたので
弓の訓練場が欲しいと言っておいた
今の僕には 上下の落差を訓練できる場所が
必要だ… あの技を完成させるためにも

今日も一日 弓の鍛錬に励んだ
急降下からの上昇に まだキレが足りない
明日も訓練場に行こう…
あそこで もっと上手く 強くなるんだ
訓練場には 僕に憧れてる子供達も来たいと
言ってるそうだ… 皆の修行場にしてもいいかな
明日は 気になってる事を試してみよう
あそこの上昇気流… あれを自在に作れたら…

どうもキナ臭い噂話ばかり 耳に入ってくる…
厄災ガノンとやらが 復活するとかしないとか
何年か前 メドーって遺物が掘り起こされて
噂になったけど あれはガノンと戦うモノらしい
ハイラル王国は あれの繰り手を捜しているという
…けど 誰にでも扱えるってモノじゃないそうだ
神獣を操るには 強力な聖なる力が必要だという
…操れれば そいつは強い力の持ち主ってわけだ
やってやるのも 悪くない… 神獣を操って
厄災を倒せば この力を世界に示す事が出来る

ハイラルの姫が 神獣に乗ってくれと頼んできた
けど詳しく話を聴いてみれば 実にふざけた話だ
神獣は援護の為に使うもので 厄災と戦う主役は
ハイリア人の何とかという騎士らしい
馬鹿馬鹿しい どうして そいつを支える
脇役を やらなきゃいけないんだ?
即座に断ってやろうと思った時
ハイラルの姫が こんな事を言った
「この大地に棲む 生きとし生ける者全てを
厄災の魔の手から 護らなければなりません…」
こんな恥ずかしい事を言える奴を 僕は初めて
見た… けど 姫の顔は 真剣そのものだった
…ハイリア人ってのは 自分の事しか考えないと
思ってたけど あんなのもいるんだな
姫に免じ 返事は保留にしてやる事にした

明日 ハイラルの姫が返事を訊きにやって来る…
この話 受けるつもりだ
あと一歩で あの技を完成させられる
皆が あれを目の当たりにすれば…
誰だって厄災と戦うべきは 何とかという名の
騎士じゃなく このリーバルだと思い直す筈だ
ハイラルの王や姫… それにその騎士自身が
僕に ひれ伏してお願いする姿が目に浮かぶな
「リトの戦士リーバル様 どうか神獣の繰り手も
厄災ガノンの討伐も お頼み致します」って

ハイラル城で 叙任式に参加し 英傑なんて
たいそうな称号をもらった
名前や格好で 強くなれるなら苦労はないが
まあ この青のスカーフは ちょっと気に入った
あの無口でイケ好かない騎士は 今日もずっと
無表情だった… あいつは何を考えているのやら
確かに あいつの腕が立つのは見ればわかる
子供の頃 大人の騎士に全勝って話も本当だろう
でも 僕には敵わない…
あの動きに ついてこれる奴なんていない
ああ そうだ… あの技に名前を付けなくちゃな
何が良いかな… リーバル…タイフーン?

今日 あの騎士が
村に 公用で訪れた姫についてやってきた
姫と族長が話している間 声をかけたが
あいつは相変わらずで 面白くもなんともない
完成したばかりの大技 リーバルタイフーン改め
リーバルの猛りを披露してやったが 反応は無し
こっちも まだまだ成功率の低いなか無理して
みせてやったのに…
もしかして こいつは何も分かってないのか?
そう思って挑発してみたけど やっぱり反応無し
張り合いが無さ過ぎて 馬鹿馬鹿しくなって
メドーに引き揚げてきた… 何なんだ あいつは

明日 ハイラルの姫をラネールに送っていくって
連絡を ダルケルから受けた
朝早くに麓まで見送って 日の暮れに
山から戻って来る姫と あいつを出迎えるという
どうしてそんな面倒に付き合わなきゃいけない?
そう思ったが ふとあの姫の顔が浮かんできた
神獣に乗って欲しいと頼みに来た時 あの姫は
使命を果たせない焦りで 必死だったんだろうな
才能の無い人間の苦悩なんて 正直分からないが
あの姫の努力してる姿は… まあ嫌いじゃない
そうだな… 見送りは流石に行かないが
夕方ひとっ飛びして 出迎えだけはしてやるか
…もしかしたら 封印の力って奴に
目覚めてるかもしれないしな

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