04

 時の勇者がガノンドロフに勝利した世界の夢を初めて見た。
 何故今になってこんな夢を見るのだろう。ガノンドロフの脅威が去ったこの世界に、もうこんなお告げは必要無いだろうに。ただ、ずっと気になっていたことがある。この世界のナズナは彼とどんな関係なのだろうか、と。

――結論から言うと、ナズナと時の勇者は出会いさえしていなかった。何故なら私がナズナをずっと監禁していたから。彼に会わせない為に。
 そして夢の中の私はナズナと身体の関係を持っていた。ナズナは私に素直に応じた。ただの命令。心の繋がりなんて無い、一方通行の歪んだ愛。

 吐き気がした。私はこんな歪んだ愛なんて求めていない。夢の中の私も理解はしているはずなのに。こんな形でナズナを手に入れても誰も幸せにならないことを。後戻りができなくなっていたんだ。ナズナの契約を破棄させる為、間違った方向に進んでしまったことに。


「――さま、……ゼルダ様!」

 私を呼ぶ声ではっと目が覚めた。目の前には心配そうに私を覗き込むナズナ。

「お休みのところすみません。でも、こんな所でうたた寝したら風邪をひいてしまいますよ」
「……ナズナ、」

 そこは私の部屋。どうやらいつの間にかソファで寝てしまっていたようだ。

「ゼルダ様、汗が……変な夢でも見てしまいましたか?」

 ナズナはそう言いながら優しく私の額の汗を拭う。いつも通りのナズナだ。
 ふっと先程の夢を思い出す。顔に生気がなく、作り笑顔を貼り付けひたすら私に従順にしていたナズナ。気付いてしまった。私もナズナを支配しようとしていたことに。人から遠ざけ、必要な知識も与えず、城から殆ど出さない。私はナズナが幸せに生きる権利を奪っている。このまま進んだら、きっと私は――

「っ、ゼルダ様!? どうかされました……ひゃっ!」

 急に涙を流し始めた私に慌てたナズナを抱き締める。状況が理解できていない様子のナズナは、戸惑いながらも私の頭をそっと撫でてくれた。

 これでいい。私はこれで充分に幸せだ。ナズナが隣にいてくれて、純粋な笑顔を見せてくれる。少なくともこの瞬間だけは、私に心を向けてくれる。

――私はあんな過ちは犯さない。絶対にナズナを幸せにしてみせる。



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