「おやすみなさい、リンク」
「うん、おやすみ。ナズナ」

 そう言って床に就いて――何時間経っただろうか。しんとした部屋に微かにナズナの寝息が響く。
 眠れない。今まで気にもしていなかったのに、ナズナと同じ部屋に寝ているということを考えると目が冴えてしまう。

 最近、ナズナを見ていると変な気分になる。もっと触れたい、抱き締めたい、……キスをしたい。
 その感情が友情ではなく恋情であると気付くのに時間はかからなかった。

「……」

 そっと音を立てずに起き上がり、ナズナの寝顔を覗き込む。すうすうと無防備に眠るナズナ。桃色の唇に自然と目がいき、思わず生唾を飲み込んだ。

――僕がこれからしようとしていることはいけないことだ。分かっている。分かっているのに。

 その欲を止めることができなかった僕はナズナの唇にそっとキスを落とす。
 初めて経験する、唇と唇の触れ合う柔らかい感触。幸福感に包まれると同時に身体の奥が熱くなる。

――もっと、もっと欲しい。

 再び口付けようとした、その時だった。

「ぅ……ん」

 突然のナズナの声に心臓が跳ね、その場から飛び退く。
 気付かれた? いや、……起きてはいない。寝返りをうっただけみたいだ。

 途端に頭が冷静になる。僕は何てことをしたんだ。寝ている女の子にキスをするなんて、こんなの夜這いと変わらないじゃないか。
 罪悪感に苛まれながらもナズナの唇の感触を思い出して頬を染める。……幸せだ。

 願うならば、こんな形ではなくナズナと気持ちが通じ合ってからキスがしたい。でも今の僕には勇気が無くてそれは出来ないから、この事は僕だけの秘密にしておこう。

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