「リンクの髪、少し長めですよね。伸ばしているのですか?」
ふとナズナに尋ねられた。そういえば、最後に切ってから随分経つ気がする。後ろで一つに結っているから僕としてはまだ邪魔な長さではないけど、ナズナと暮らすようになったから少しは身嗜みに気を配ったほうがいいかもしれない。
「いや、単に切るのが面倒だったから……もう少し伸びたら切ろうかな」
自分の髪を触りながら答えると、何故かナズナは残念そうな顔をした。
「……どうしたの?」
「い、いえ! 綺麗な髪ですから勿体ないなあと思いまして……」
はにかみながら言うナズナ。その言葉と表情に思わず胸が高鳴った。それを悟られないよう、必死に平静を保つ。
「触っても良いですか?」
「え!? ……べ、別に良いよ」
興味津々で僕の髪を見つめるナズナの輝く瞳が眩しくて、つい許可してしまった。
異性の髪に触れたがるなんて何か特別な意味があるのかと思ったけど、ナズナの様子からするとただ純粋に触りたいだけのようだった。何故か少し気落ちする。
「良かったら今度結ってみても良いですか? 私、髪を結うの得意なのです」
「え、……あ、うん」
「本当ですか? ありがとうございます。リンクのお陰でひとつ楽しみが増えました!」
にこにこと楽しそうに微笑むナズナ。そうか、ここは娯楽が少ないからナズナにとってはこんなちょっとしたことでも楽しみなんだ。
まだ暫くは伸ばしておこう。僕はそう心に決めた。
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