※どこかに入れようと思っていた没ネタ。
話の流れが本編とは違います。




「ナズナが猫にばっか構うって?」

 肩を落とし気落ちした様子の息吹はこくりと頷いた。

 結局あの猫はハイラル城に住みついた。ナズナはその猫をよく構いに行ってるようだけど、息吹はそれが気になってしょうがないみたいだ。
 というかこいつ動物相手にまで嫉妬するのか、と哀れみの目で見たら泣きつかれた。

「お前、嫉妬深いの直すんじゃなかったのかよ」
「だから先輩に相談してるの! ナズナ最近猫の話しかしないんだもん! 他の男に取られたみたいで嫌だけどナズナは嬉しそうだからそんなこと言えないし……」
「あの猫メスなんだけど」
「そういう問題じゃなくて!」

 喚く息吹を横目に、まあ相談するようになっただけマシか、と溜め息をつく。しばらく話を適当に聞き流していたら息吹が机に突っ伏してぼそりと呟いた。

「……先輩ってどうやって狼になってるの」
「は?」
「オレも狼になってナズナに撫でられたい……先輩はブラッシングしてもらったのにずるい……あの猫にナズナはオレのだって見せつけたい……」

 今度はめそめそといじけ始めた。こいつ日に日に精神年齢幼くなってないか? と引いて……もとい心配していたら、この時代のゼルダ姫に挨拶に行っていた先代とナズナが戻ってきた。

「ただいま! お土産にケーキ貰ったから皆で食べ……あれ? リンクどうしたの?」

 机に突っ伏したままの息吹を見てナズナが首を傾げる。ナズナに顔だけ向けた息吹は「ナズナ……」なんて何とも情けない声を漏らした。

 良かった……後はもうナズナに任せよう。
 ほっと息をつき席を離れたら、何やら探しものをしている様子の先代が目に入った。

「ねえトワ、僕のお酒知らない? ここに来る前に買ってくれたやつ」
「え? それならキッチンに置いておきましたけど……」

 先代に尋ねられキッチンに目をやると、置いておいたはずの酒瓶が無くなっている。先代にお供えするために買ったものだから俺が忘れる訳ないと首を傾げていたら、

「リンク、もしかしてお酒飲んだ?」

 なんて声が耳に入った。

「飲んでない……」
「でも前に間違って飲んだ時こうなってたでしょ。ほら、お水飲める?」
「うー……」

 振り返ると息吹に後ろから抱きつかれたナズナが慣れた様子でそれをなだめ、コップに水を注いでいた。
 酒のせいで様子がおかしかったのかとそのやり取りを見て納得する。でも何でも食べる息吹が酒くらいで酔うなんて意外だな。しかも自分から酒を買って飲んでる所なんて見たことない――って、まさか。

「息吹! 僕のお酒飲んだの!?」
「だから飲んでない……」
「せっかくトワが買ってくれたのに! 久しぶりのお供え物が……!」
「えっ、勇者様のお供え物飲んじゃったの!?」


 その後は嘆く先代を俺がなだめて子供返りした息吹はナズナがなだめて……とにかく面倒臭かった。姫に貰ったフルーツケーキのお陰でその場は収まったけど、息吹は今後酒を飲まないでほしいと切に願った。

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