「いやー! 無理無理無理ぜったい無理!!」

 先程からゼルダに追いかけ回され必死に逃げている私。逃げるに決まっている。だって出陣前の食事で出されたものがヒガッカレまんじゅうという名のガッツガエルだったから。ゼルダはどうしてもコレを私に食べてほしいみたい。

「好き嫌いはいけませんよ。ただの可愛いお饅頭じゃないですか」
「どこが!? ガッツガエルそのものじゃん! 饅頭要素どこ!?」

 ゼルダの目には何が見えているのだろう。どう考えても饅頭じゃないでしょ。ヒガッカレ宿の名物らしいけど、これが名物とかどうなってるの。

「ナズナ、聞いて下さい! このガッツガエルもゴーゴーガエルと同様最近研究されている生物なのです。己の限界を越えた気力を引き出せる効能があるので、これからの戦いに有効活用できるのではないかと……」
「!! ほら、ガッツガエルって言った!」

 一瞬ぎくりと顔を強張らせるゼルダ。

「……でも見た目より美味しかったですよ。ね? リンク」

 ゼルダに問われリンクは無言で頷く。リンクもゼルダの味方か。でも、文字通り何でも食べるリンクと同じにしてもらっては困る。私の味覚と胃袋は至ってごく普通なんだから……ってさっきゼルダ「美味しかった」って言ったよね。まさか。

「……もしかしてゼルダも食べたことあるの?」
「ええ。研究の一環ですので」

 あ、これもう食べるしかないやつだ。キラキラ笑顔のゼルダとは対象的に顔を青くする私。食べてくださいね、と圧が伝わってくる……気がする。それをおろおろしながら見るリンク。今だけはゼルダの研究熱心さを恨めしく思った。

「お願いですナズナ。ナズナの能力は未知の力なので、今後の為にデータが欲しいとプルアからも頼まれているのです」

 プルアさんまで! 私が流されやすいの知ってるくせに……!
 ゼルダはうるうると目を潤ませ上目遣いで私を見る。本人は無意識なんだろうけど、私は昔からこの顔に弱い。揺らぎまくった私の心は完全に折れた。

***

「……あれ、意外といけるかも」
「でしょう? おかわりもありますよ」
「いや、それはいいや……」

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