※「もうひとりの」で猫を探してた二人のお話




「ナズナ、猫見つけたぞ」
「え、もう見つけたんですか!? 早いですね」

 用事も済んだのでナズナに声を掛けに行くと、ナズナは俺に、というよりも猫に向かって駆け寄ってくる。この時代では猫は珍しい動物らしいけど、前にここを縄張りにしている猫を見たことがあったから見つけるのにそんなに時間は掛からなかった。
 珍しそうに猫を見るナズナの様子を見守る先代から和やかな空気が漂ってくるのを感じる。ナズナのことも驚かせたいらしいから、今は姿を消しているそうだ。

「うわあ……可愛い! 私、本物の猫をこんな近くで見たの初めてです。リンクさんの時代はこんな可愛い子を普通に飼ってたんですよね。羨ましいなあ」

 緩んだ顔で猫を撫でるナズナ。抱っこしたそうだったので猫をナズナに渡してやると、猫も嬉しそうに目を細めた。そのなんとも穏やかな光景に俺まで穏やかな気持ちになっていたら、

「あーもう、可愛いのはナズナのほうだよねえ? ほんっとナズナは僕のナズナに似て可愛いんだから。トワもそう思わない?」
「せっ……!?」

 先代のデレッデレの声が耳に入り思わず反応してしまった。あ、あの凛々しい先代がこんな声を出すなんて……!? 両手で口を押さえる俺をナズナがきょとんと不思議そうな顔で見つめる。

「リンクさん? どうかしましたか?」
「いや、な……何でもない。ナズナどうぞ、続けて」
「?? はあ……?」

 ナズナは頭に疑問符を浮かべながらも、再び猫を構い始めた。俺は先代が居るであろう方を見る。

「ごめんごめん、隠れてること忘れてた」

 からからと笑う先代の声を聞きながら思った。俺に対してもだいぶ甘かったけど、さっきの感じだとナズナに対してはそれ以上に甘々だ。息吹にちょっと辛辣なのはそのせいか、と納得する。まあでも確かにナズナは可愛いし。娘を溺愛する父親(じゃないけど)、なんてよく聞く話だ。
 もし俺と俺のナズナの間に娘が産まれたら俺だって先代みたくデレデレになるだろうな、とまだ付き合ってもないのにそんな妄想をしていたら顔に出ていたようで、ナズナに「リンクさんさっきから大丈夫ですか……」と引き気味で心配された。

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