最近リンクさんのもふもふ毛が部屋の至る所に散らばるようになった。当のリンクさんはというといつもの綺麗な毛並みが所々不揃いになっていて、そこをつまんでみたらひょいっともふ毛が取れた。

「リンクさん、換毛期大変ですね」

 伏せていた顔を上げたリンクさんと目が合う。頭を撫でてあげると気持ち良さそうに目を細めるからもっと撫でたくなるけど、リンクが不機嫌になるだろうから一回で止めておいた。

「抜け毛で先輩がもう一匹できそう……換毛期ってこんなに抜けるもんなの?」

 ブラシについた毛を取りながら気怠げに話すリンクが溜め息をつく。
 あれ以来ずっとブラッシングはリンク担当だから、私は最初の一回だけしかやれていない。私が買ってきたブラシなのになあ。

「私も手伝いたいよー……」
「だめ」
「……ケチ」

 私だってもふもふブラッシングしてみたいのに。不貞腐れながら抜け毛の山に目をやる。せめて抜け毛だけでもともふもふを堪能していたら、昔お母さんに教えてもらった羊毛で作る人形のことを思い出した。

「あ、この毛で人形作ろうかな」
「毛で人形? ……呪いでもするの?」
「そういうのじゃないから! コウゲンヒツジの毛で作ったの見せたことあるでしょ? 針で刺すやつ」
「ああ、アレか。びっくりした」

 若干引き気味になるリンクに慌てて説明する。呪いという言葉に反応したのかリンクさんもこっち向いて身構えてるし。作りたいのはただの可愛い人形ですってば。

 触った感じだと狼の毛でも作れる気がする。勇者であるリンクさんの狼姿の毛でできた人形とかご利益ありそうだな。上手に作れたら勇者様にお供えしてあげよう。



「それで作ったのがコレかあ。ナズナ器用だね! トワがそのまま縮んだみたい」

 私の手のひらに乗る狼姿のリンクさんの人形を見て嬉しそうにはしゃぐ勇者様。勇者様もこんな子供みたいに無邪気に笑うんだ。ちょっと意外で驚いた。こんなに喜んでくれるなら作って良かったなあ。
 ここに置いておきますね、とリンクさんが作ってくれた祭壇にちょこんと置いてみたら中々しっくりくる。狼リンクさん自体が神々しいからかな。

「ありがとう! ナズナも見てるかな。見せてあげたいなあ……」

 いつもの凛々しい勇者様とは違った様子にリンクも驚いてるみたい。対してリンクさんは驚く様子もなく普通に勇者様と話している。ということは珍しい訳でもないのかな? こっちが素なんだろうか。

 伝説の勇者様と言っても普通の青年みたいな一面もあるんだな、と少し親近感が湧いた一日だった。

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