「リンクさん! 見て下さい!」
「どうしたナズナ……って、おお?」

 テンション高めのナズナの声に振り返ると、俺の勇者服を着た息吹が立っていた。髪型まで真似ていることもあり、傍から見ればまるで双子にでも間違えられる程度には似ていると思う。

「どうですか、似てますか? これ、リンクさんの勇者服ですよね?」

 ナズナは目を輝かせながら食い気味に話す。そういえばナズナって勇者の伝説を研究してるんだったっけ。血が騒ぐのだろうか。

「凄く似てるけど……なんでこの服持ってるんだ?」
「なんか空から降ってきた宝箱の中に入ってたよ」
「へえ……??」

 ナズナとは対象的に冷静な息吹。なんで空から宝箱が降ってくるのか分からないが、懐かしさもあって緑衣をまじまじと観察する。そっくりではあるが、よく見ると俺が昔着ていた服とは別物のようだ。息吹の体格に合うように縫製されているし、旅の途中で付いた汚れや傷も見当たらない。
 すると、先程からそわそわしているナズナがシーカーストーンを手にこう言った。

「二人とも、折角なのでウツシエ撮っても良いですか? これ凄く貴重な記録になると思うのです……!」


***


 ということで一回戻って俺の緑衣も持ってきた。「本物だ!」と言ってナズナが凄くはしゃいでいるけど、そういえば息吹は緑衣持ってないのだろうか。

「うーん、どうせならポーズ取りましょう。勇者っぽいポーズでお願いします」
「勇者っぽい……? 息吹、何かあるか?」
「マスターソード構えるとか? 先輩にはオレの近衛の剣貸すよ。使ってないし」

 そう言われ息吹から黒い剣を受け取る。紅く刻まれた意匠が格好良い。心をくすぐるデザインに俺まで少しテンションが上がった。

「良いですねー! 凄く勇者っぽいです! ではいきますよ!」

 ナズナの"勇者っぽい"の基準がよく分からないが、適当に剣を構えたら満足してくれたようだ。
 カシャリ、とシャッターを切る音が聞こえた。

 三人揃って先程のウツシエを確認する。自分が二人並んでいる(ように見える)光景なんて滅多に見れるものではないから変な感じだ。"勇者っぽい"ポーズと相まって、思わず少し吹き出す。

「ウツシエってゲンゾウできるらしいので、後でリンクさんにあげますね。向こうのナズナさんにも見せてあげて下さい」
「本当か!? ありがとう。ナズナ驚くだろうな」
「渡す予定があるなら折角だしナズナも一緒に映ったら? コレ自撮りも出来るからさ」
「あっ、そうだったね! じゃあもう一回……」

 二人のお陰で思いがけないナズナへのお土産が出来た。俺とナズナ、名前が同じで顔も似ている二人が別の時代にも居るなんて知ったらナズナはどんな反応をするだろうか。次にナズナに会うときが楽しみだな。

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