※時夢主が出てきます。ご注意下さい。
番外編「勇者たちの休日」の小話。
「あ、」
聞き覚えのある狼の遠吠えが脳内に響いた。
確かトワはもう狼の姿になれなかった気がするけど……聞き間違いではないようだ。しかも、何故かやけに遠い場所から聞こえるような。首を傾げる僕にナズナが声を掛ける。
「リンク? どうかしましたか?」
「いや……トワに呼ばれてるなと思って」
「トワさんに? 何かあったのでしょうか」
ナズナも首を傾げる。とりあえずトワの様子を伺おうと、ナズナの手を取り声のした方へ意識を集中させる。すると浮かんできた光景は何故か息吹のいるハイラルだった。
「あれ? 何でトワが息吹と同じ世界に居るんだろう」
「本当ですね。息吹さんが見えます」
状況が飲み込めなくて二人して頭に疑問符を浮かべる。その間にもトワはずっと遠吠えを繰り返していた。
「あちらの私が力を失ったので、もう向こうには行けないかと思っていましたが……トワさんがいるなら行けるかもしれません。どうしますか?」
「んー……様子見てからにするよ。急いでる訳でもなさそうだし」
子孫のトワやナズナならともかく、息吹にやたらと僕の姿を見せるのは何だしなあ。本来僕は向こうの世界に居る人間じゃないし。
すると、ナズナがくすくすと笑った。
「息吹さんに会うの恥ずかしいですか? 大丈夫ですよ、姿も隠せますので。もし行きたくなったら私に言って下さいね」
「……うん」
……やっぱりナズナには敵わないや。
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