「ナズナはよく俺の時代の文字読めたな。俺はこの時代の文字全然分からないのに」
頬杖をつき、時の勇者様が遺した本をパラパラとめくりながらリンクさんが呟いた。
「え、どういうことですか?」
「だって先代の本に書かれてる文字って俺の時代のハイリア文字だろ。解読して読んだのか?」
「? いえ、普通に読んでましたが……」
リンクさんは何を言っているのだろう。その本に書かれている文字は私達が普段使っているハイリア文字のはずだけど。
噛み合わない会話に二人で首をかしげたら、リンクがリンクさんの後ろから本を覗き込んで口を開いた。
「普通の文字じゃん。オレでも普通に読めるよ」
「は? なんで? ……じゃあお前これ読める?」
リンクさんは近くにあった紙にペンでさらさらと何かを書き、それを私達に見せる。文字なのだろうけど私には記号が羅列してあるようにしか見えない。
「何これ。文字なの?」
リンクも私と同じ感想だったようで首をかしげた。でも……あれ? この記号、どこかで見たことあるような……
「何って、この本この文字で書かれてるだろ」
「……先輩疲れてるんじゃないの」
「んな訳ないだろ。そうなると先代とナズナさんが何かしたんかな……」
リンクとリンクさんの会話を頭の片隅で聞きながら、私は先程リンクさんが書いた文字を穴が開きそうなほどじっと見つめた。これ、もしかして……
「ナズナ? どうしたの」
「古代文字……」
「え?」
「この文字! どこかの遺跡で見たことあるの! えーっと、どこだったかな……」
記憶を辿ってみるけど思い出せない。でも、今のハイラルに残る古代文字のうちの一つであることに間違いないと思う。これが解読できたら研究が一気に進むのではないかと思うと、胸の高鳴りが抑えきれなくなった。
「リンクさん、これの読み方教えて下さい! 世紀の大発見になる気がします!」
「お、おう……?」
あの本の謎も気になるけど、とにかく今は古代文字だ。メモ帳を片手に目を輝かせながらリンクさんに迫った。
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