「リンクさん、ブラッシングしてもいいですか? いつものお礼です!」
ペット用ブラシを持ちながら満面の笑みでそう言うナズナ。ペットも飼ってないのになんでそんなもの持ってるのか聞いたらわざわざ買ってきたそうだ。
折角の好意を無下にするのも悪いし、それならばとブラッシングしてもらうことにした。
「気持ち良いですか? 痛かったら言ってくださいね」
狼の姿になった俺の背中を丁寧にブラッシングするナズナ。ブラッシングは初めて経験するけど、結構気持ち良いな……これ。
「リンクさん、頭を上げてもらえますか? 次は顎の辺りやりますよー」
背中も良かったけど顎と首の辺りはもっと気持ち良い……ナズナのブラッシングが上手いのか? 伏せの状態から自然と腹を見せる体制になる。するとナズナがくすりと笑った。
「あ、気持ち良かったですか? じゃあ次はお腹やりますね」
そう言って俺の腹に手を伸ばそうとした瞬間、どこから現れたのか険しい顔をした息吹がナズナの腕を掴んだ。
「うわ、びっくりした! リンクいつの間に帰ってたの?」
「……腹はオレがやる。貸して」
「え?」
ナズナからブラシを受け取る息吹。何となく嫌な予感がして身構えたが、そんな予感は外れて普通にブラッシングされた。でも顔はずっと険しいままだ。何だこいつ。
「なんだ、リンクもブラッシングしたかったんだね。怖い顔してたから何事かと思った」
「うん。だからこれからはオレが全部やってあげる。ナズナはこんなこと今後はやらなくていいからね。絶対」
"絶対"を強調して言う息吹。ナズナに対しては笑顔だったのに俺の方を向いた瞬間視線で圧をかけてきた。前も思ったけどこいつナズナの事になると面倒臭いな……
ナズナは残念がってたけど、俺も面倒事には巻き込まれたくないし。向こうに戻ったら俺のナズナにおねだりしてみるか。
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