※ 夢主不在です。リンク目線。



ゼルダ姫様お付きの騎士になって数日。以前から薄々感じてはいたが、姫様はオレのことを良く思っていないようだ。主からどう思われていようとオレはただ自分の使命を果たすだけだが、先日困った事が起きた。姫様に逃げられてしまったのだ。ゲルドの街の中に。ウルボザに知恵を貸してもらって事なきを得たが、正直あの対処で姫様がオレから更に距離を取るようになった気がする。流石に女装はまずかっただろうか。

ナズナから姫様をよろしく、と頼まれているのにいざという時にお護りすることが出来なかったらナズナに顔向け出来ない。お護りするにはまず少なくとも逃走されないような信頼関係を得ることが大切だと先日の事件で学んだが、どうやったら信頼してもらえるのだろうか。ダルケルから神獣が上手く動かせないと相談を受けていたので、そのついでにオレもダルケルに相談することにした。


「信頼なあ……難しくてよく分からねえが、俺は好きな食い物が同じ奴に悪い奴はいねえと思ってるぞ。好きなものの話でもしてみたらいいんじゃねえのか?」

「……好きなもの」


食の好みは分からないが、姫様の好きなものと言えば……遺物研究と生物研究、それにナズナと話すことだろう。研究のことはともかく、ナズナのことならよく知っている。きっと姫様がナズナを知ってる以上にオレはナズナのことを知っている。よし、ナズナの話をしよう。


***


これが大成功だった。ナズナの話題を出した途端、姫様は物凄い勢いで食いついてきた。目をキラキラ輝かせながら。

「……ええ、そうなんです。ナズナったらそのフルーツケーキが凄く気に入ったみたいで本当に幸せそうに食べるんです。ナズナはどんな料理でも美味しそうに食べてくれるのですが、あの時の顔は特に可愛くて可愛くて。思わずウツシエで撮ってしまいました」

「……! 本当ですか姫様! ……み、見せて頂いても宜しいですか」

どうぞ、と差し出されたシーカーストーンにはナズナの姿。あああ、可愛い。ほっぺにクリームを付けて美味しそうにケーキを頬張る姿から、ウツシエを撮られていることに気付いて照れる姿まで一連の動作が映されている。

ナズナは昔から食べることが好きだ。とは言ってもオレのように沢山食べる訳ではなく、至って普通の量なのだが見ているこちらが嬉しくなるくらい幸せそうに食べる。それが見たくて子供の頃からよく料理をナズナに作っていた。まるで女神様へお供え物をするかの如く。

シーカーストーンに映し出されるナズナに見惚れていると姫様が隣で笑い出した。

「リンク、貴方もこんな顔をするのですね。私は今まで貴方が何を考えているのか分からなくて……正直苦手意識を持っていたのですが、ナズナをこんなに大切に思っているのを知って親近感が湧きました。申し訳ありません、失礼な態度を取ってしまって」

その言葉にぎくりとする。やっぱり姫様はオレのことを良く思っていなかったようだった。無口で仏頂面だから他の人からも苦手意識を持たれることは多いけれど、それは今更どうにもできないので仕方がない。でもナズナのお陰で少し心を開いて下さったのだろうか。オレの前で姫様が笑うのを初めて見た。

「私、ナズナの小さい頃の話をもっと聞きたいです。二人は幼馴染なのでしょう? ハテノ村ではどんな感じだったのですか?」

姫様の質問攻めに、昔の記憶を思い出しながら答えていく。
ナズナはやんちゃな割に泣き虫だったからよく泣いていた。そのナズナを護るのがオレの小さい頃の役目だった。昔は魔物も少なかったから村の外に探検に行ってはよく大人に怒られてたっけ。木登りや泳ぎ方、馬の乗り方を教えたり、逆にオレは食べられるキノコや野草を教えてもらったり。あとは色んな勇者伝説を話してくれるのも好きだった。伝説に出てくるキラキラ光る妖精に会ってみたくて、タルホ池のシズカホタルを捕まえて妖精ごっこみたいなこともしていたなあ。

ナズナの可愛さを共有できる人がいることが嬉しくて、つい饒舌になってしまった。オレの話を終始楽しそうに聞いていた姫様。最後に「今度三人でお茶でもしましょう」とのお誘いまで頂いた。良かった、少しは信頼を得られたのだろうか。後でダルケルにお礼をしないと。特上ロース岩でもプレゼントしようとオレは心に決めたのだった。

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