( 追想信号交差点 )


夢を、みる。とても幸せな夢をみていた。まるで、頭から空に落下していくころに視る走馬灯のよう。それはそれは、こわいほど幸せな日々でした。
指でなぞるフィルムの白黒ボーダーの歩道。ばら撒いたいつかの日をひろい集めて。
雨は逆様に降る。否、もしかすれば自分の方がサカサマなのかもしれない。


くるくるとぐろを巻いて、昨日拾った柘榴を齧る。誰かの×××を喰べるときみたいな感触。粘っこく隙間からしたり落ちてくる小さな粒はもう何処に行ったのやら。

「 」

向かい側赤色信号を点滅させながら、わたしが林檎を口にする。善悪もつかぬ少女は禁断の果実をひとつ舐めた。消えそうな短い海色の髪。うそ。消えはしない。消える事なんて、カノジョが望む事なんてないだろう。また、微笑み返す。
柘榴で出来た果汁を差し出すその手。飲めばきっと、この手は白いまま。


「どんなときも、わたしが貴方をまもるから」
唯一安全色を醸し出す長い青色にそう告げた。