外であるハズなのに、個室のように重苦しい空気。
深夜であるハズなのに紅く染まる空。
――普段では絶対に想像出来ない世界。
足元に転がるは誰かの残骸。
崩れ落ちた日本古風な屋敷の塗りは一度見たのと全く対象的の色に。
じりじりと火花が風に揺られて漂う。その姿はまるで彼岸花の散り際を連想させた。
彼岸花は、もう一輪咲いていたようだ。
全ての、この空間の、中心に佇んでいる子供。
着ている蒼の着物は所々くすみ新しく斑が飛び交っており、その瞳と同じ色であった。
一瞬、自分の身体の何もかもが停止した。
髪は絹のように美しく、あの広大な蒼空に海が脳裏を過る。
と、その子供が力なく足元を泳ぐ紅の溜め池に倒れた。微かに、弾ける音がした。
慌てて駆け寄ればさらに、子供は男児だったと気付かされる。
歳には似合わず小柄な体型に、軽すぎるかと思い驚愕した体重。


それが、彼とのファーストコンタクトであった。
「兄さん!」
精神を無理矢理身体へと引き戻したのは紛れもなく自分と4分の1繋がっている、蒼に揺られる従弟であって、
「たく、ちゃんと仕事しなきゃ」
台形の机の両端には真っ白な長方形が、軽く一メートル。しかも累計三つ。
「………理事長」
「改、君か。イチを連れて来たのは」
うっすらと苦笑いすれば、まるで蛇のように睨み返す助手。
「ええ。理事長が余りにも溜め込むものなので」
本当に左斜めに映る我が最愛なる従弟と同じ歳だというのに、この圧迫感はなんだ。
(絶対イチはこんなキャラに育てない!)
そんな誓いを一人たてながら、私は石榴色の髪色をした助手と愛しい家族からトラウマを植え付けられそうになったのであった。



(気づけなくて)




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