「………はあ、」

ぺらぺらと雑誌を捲りながらひとり、目の前の彼女は項垂れた。
そういえば今日は今年最高気温に達するだろうと、液晶の板の向こうから綺麗なお天気お姉さんが注意を呼びかけていた。
それでもそんなもの、ここには意味を持つことなんてなくて。冷暖房完備、快適な学生生活を満喫するお金持ち学校には外がどう騒ごうが蚊帳の外。実質、生徒たちがよく外出する街で事件があったときだって、本気で自分の身の危機を感じるひとなんてほんのごく僅かだったんだろう。自分だって、幾らおそろしいと眉を寄せてもただそれだけ。全寮制な此処では外界との触れ合いなんてさほど困難でないように見えても、実質透明なガラスの壁が生徒たちと浮世を隔てているのだ。

ウォーターを飲みながら、ひかるちゃんは未だその行為を続けていた。一体、何処でそんなものなんて手に入れたのだろうか。あ、そういえば前街で売ってただなんて言ってたような。でもそんなものを買う令嬢やらお嬢様なんてあんまりいない。そもそも彼女のようなお嬢様なんてごく一握り。他の子たちとかはみんなおしとやかに、ずっとそうやって教育されてきたのだろう。そういうことを考えると、改めてひかるちゃんが結構頭つきんでているのだと感じさせられる。


「なーんか最近面白いことないなー」

「あったじゃない。ひかるちゃんが好きそうな事件。」

「あったっけー?覚えてないや」

「わたしも最近聞いたばかりだけど。大量殺戮事件」

「ああ、アレ?……正直あんなのただの私利私欲のためでしょどうせ。それに"竜の申し子"なんて都市伝説の類じゃん。どーせ直ぐ犯人捕まるだろうし、詰めが甘いわ詰めが」

そう言ってぱたぱたと呆れながら雑誌で仰ぐ少女。ぺらぺらと音がかすかに聞こえる。
ガーリックを口にしながら、とあるページを開いては目の前に突き出した。

「"最新都市伝説"……?」

「そ。都市伝説っていわば噂だから随時不定期に溢れ出すもんなのよ。」

「なんか、グルメ雑誌とか見たいな言い方だね……」

「あんまり変わらないよ。"現在一番あたらしいリスト"出してるってことでは同じだし」

「同じ、なのかなあ……」

そうぐだりつつも、まじまじと読んでみる。実はこの時初めて庶民的"雑誌"を手にとったのはちいさな感動。学校とかの情報部門の生徒たちが自主出版しているのはすこし読ませてもらったこともあったけど。

「"10年前から多くの村や人々を殺し、七年前にぱたりとその行為を止めた今世紀最悪とも言われる殺人鬼。国としても隠蔽されてきた事件も彼に関しては多い。そもそも"彼"なのか"彼女"なのかはたまた本当に"鬼"かと判断もつかない、何もかもが不明確詳細が一切無い存在。そもそも本当に"竜の申し子"は居たのだろうかとも謎である。だが、そんな殺人鬼でもひとつの特徴があるという。それは――"」

無心に音読しながら、ふと息が詰まった。
おどおどしさを演出するために、不気味な蒼と黒のダーク系で印刷された紙面の白い文字。ひとこと。

「片腕が無いんだってさ。笑えるでしょ。凶器が刀とかデカイ刃物だっていうのに。そんなんで人なんて沢山、ましてや村一つ滅ぼせやしないよ。」

けらけら可笑しいと笑うひかるちゃん。
陸上だけではなく、空手も得意な彼女は人間の身体というものを"肉体的"に知り尽くしている。いくら科学的根拠や計算なんてしなくても彼女は、重量的に換算される人間の筋肉的運動比較やエネルギーがどう働き限界が何処までなのか、そんな人間のエネルギーを解っている。そんな彼女が言うのだから、それは本当なのだろう。片腕の無いひとごろし。本来在り得ないのだ。もし、本当に居たとしても精々指折り。ウォーターを喉に通しながらまた少女は云った。

「じゃあね、ひかるちゃん。片腕が無くても沢山ひとを殺せるひとって、どんなひとなの。肉体的や色んな意味で」

我ながらなんていう質問をしているのだろう。妹に聞かれたらまた鼻で笑われるのだろう。下品ではしたないと。それでも興味を持ってしまったものは仕方ないのだ。昔から、ひとつ関心や興味を何かに持てば、其れが自分の中で構成納得するまで其れにしがみつく性格なのだ。わたしは。

「んー、ただ殺すだけだったら銃とか爆発物とかじゃないかな。まあ片腕が無い代わりかなりのダメージがくるけれども。ああ、他に毒物使うやつもいるんじゃない?それなら肉体的ダメージは無いでしょ。……まあ、ひとを殺すような奴が知り合いに居ないからなんともいえないけどねー。そんな武器云々とか」

「そのわりにはよく知ってるね」

「ぜーんぜんっ。ただ洋画SFとか見てたらよくあるじゃん、そういうの」

「やっぱり好きなものだと結構物知りなれるんだねえ」

「でもリナの花に関しての知識はもう物知りを超えてるよ。何言ってんのかさっぱり」

ころり、グラスの中に沈んでる氷が溶け出し時間を告げる。
シックな時計の針がぐるぐると円を描く。その線が交わる事はない。
窓の外見下ろせば見渡す校内。白い壁に、淡い茜色の屋根がちらほらと見える。唯一開放されている屋上には暑さのせいで誰も人っ子一人近寄ってすらいなかった。
そしてまた、腕時計を見た。そろそろ時間。ひかるちゃんには悪いけれど、もう行かないと。
椅子を引いて立てば、小さく鈍い音が横ばいした。

「ごめんひかるちゃん。ちょっと用事が……」

「ん、ああいいよいいよ。いってらー」

「うん、ほんとうごめんね」










軽く、12年間も此処で暮らしていたようなものだったのか。そう道を歩きながら再び思った。
花々が咲き、木々は青々と。なんとも美しい風景。
遠くに教会が見える。そういえば、此処ではとある神を信仰している。不思議なものだと思う。ひとはその存在を、見たことも感じたことも無いのに"何もかも世界を司る超越した存在"として崇め、そのために生きてきたひとたちも少なくは無い。それでも、特に何も無かった昔の人はどうにもならないことを神の前で祈り懺悔したのだろう。それが結果的にどんなものをもたらしたかは知らない。

「もし、きみのまえにカミサマが居たらどうする?」

彼はそう言った。まだ幼かったわたしにはどうといえることもなく、ただ黙り込んでいただけだったけれど、彼はただずっと笑顔だった。

「でも、かみさまって見えないんでしょう。人間とはべつの存在だから」

「じゃあ、信じないの? リナは」

「……そんなの、あったことなんてないからわからない」

「それは、あえば信じるってことかな」

「ふふっ、涙羅兄さんはほんとう面白いね」

「そうかなぁ」

笑いながら、あの時の親戚の彼は頭を掻いた。もう、何年も前のこと。




「――かみさま、」

ふと、教会の十字の前。床に膝をついて手を合わせ声を漏らした。

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……。わたしのせいで、彼は死んだのです。わたしの、せいで妹は……――ごめんなさい、ごめん、なさい…」


懐かしいと過ぎる記憶。罪の告白。懺悔の声。ステンドグラスが光を浴び、降りかかる光彩雨。
寒さなのか、恐ろしさなのか、わけがわからず震えるからだ。吐息は、夏だというのに目に見えるほどしろい。
見えぬ神々にすがりつく、わたしは罪人なのですか。でも、きっとそうなのかもしれない。すべて、すべてわたしがひきおこしてしまった。何もかもの原因はじぶん。取り返しのつかない罪を持ち出したのも、わたし。何も変わらぬ答えに口を開く。

何時の間にか目の前に立っていたひとりの少女。修道女。海のように透き通った蒼と、雪のように穢れを知らぬ白い髪。瞳は深海を泳ぐ人魚。蒼い聖母。


「それが、あなたの懺悔。よく、神の前にて告白してくれました。――神はあなたのような罪を犯してしまった人間も愛してくれます。どうか、ご安心なさってください。」

そう慰めの言葉を詰んだ彼女は、まさにマリアそのものであった。















大きく切り取った空。背後に並んだ大きなガラス戸。広い学院を見渡すにはきっと此処が一番の絶景ポイントなのだろう。そうひとつ思考を拾った。

「えらく不機嫌ですね」

書類の山に囲まれながら上の空な彼に言う。
理由は何となくぴんと来る。はあ。また重く溜息をついては下鶴改はやれやれと頭を抱えた。

「不機嫌も何も、先ずレディたちを比べるなどという行為自体が如何わしいのだ」

「じゃあもう廃止すればいいじゃないですか。そんなに嫌なら」

「今年はもう手遅れだ。それに、伝統を安易に潰す行為は避けたい」

「黙ってくださいこの女たらし」

「ただ私は全ての女性に等しく愛情を注いでいるだけだ」

「――さて、風丸君に電話でもしましょうか」

「イチにはそれ以上の愛を捧げている」

と、丸くなる双眸。しん、一瞬空気が止まり観葉樹が雫を落とした。

「驚きました。理事長が女性よりも風丸君を取るなんて」

「下鶴君、君私のことをなんだと思ってるんだい?」

「いえ…、てっきり闇野カゲトと共に部活動を行い・転部をしたことで怒っているのかと」

「何故私がイチを恨まなければいけない。それに、イチの考えを否定することなど無い。いや
、できやしない。――恨むのならば、闇野カゲトを恨む」

紅いカーペットが視界を霞む。
さらり。流れる髪が其れを遮った。まるでブラインド。見ようにも、隠してしまう。彼岸色はただあかく。

「何故、そうも闇野カゲトを嫌うのです?……それならばあの部活動も禁止すればよかったものを」

「……私が彼を拒むのは、彼がイチにとって害となる存在だからだ。だが、部活動に関しては、イチが楽しんでいるのならばまだいい。それに、あそこには樹来の人間がいる」

「"樹来"、と言えばあの樹来家ですか?」

少し、聞いたことがあった。医学の世界では知らぬ者が居ない、有名な医療の家。実質、今外科医の世界トップクラスの名医が居るということも、何処かで小耳にはさんだ覚えがある。
しかし、そのような姓の生徒等居ただろうか――一通り在学中の生徒名簿を初等部から高等部まで全て見たが、そのような名など存在しなかった。記憶力が異常に良いとされている自分のことだ。それに、それほどの名ならば覚えているはずだ。

「"時雨緑"。それが、樹来家長女だ」

そんな矛盾に悩む自分に気づいたのか、彼がひとつの名を挙げた。この名ならば聞いたことがある。

「高等部二年の学年一位ですか。……しかし何故姓が…、というか彼女と知り合いなのですか」

「姓の事に関しては、まあ色々あったのだろう。其処あたりは流石に知らない。」

ふう、少し息を吐いた。冬になれば、きっと白く色付くのだろう。すらすれ。余計なことを考える思考。
そして、開かれた口が呟くそのひとことにきっと自分は驚くのだろう。

「親戚だ」

「――…………はい…?」

先程よりも、更に眼を見開き、思わず手元の荷物を落としてしまった。鈍い音がしたが、それにも気を止めずただ耳を傾けていた。

「勘違いするな。勿論血なんてものは繋がっていない。特に彼女に関しては」

「………樹来と何があったんですか」

「樹来の人間が養女になったことがあってな。それから互いに知り合う関係となった」

「手、出してませんよね」

「非常に残念だ。一目お会いでもしたかったが、気づいた頃にはもう彼女は居なかった……」

「ほんとに風丸君に言いつけますよ」

「どちらにしろ、手をつけるなんてことはしない。何故なら私は紳士だからな」

そうきりりとした表情で言うひとり。相変わらずだと項垂れるひとり。
と、ふと頭が気づいた。まだ何も繋がっていないと。口を吐く。

「でも、それじゃ安心する理由にならないと思うんですが。たかが親戚ですし、そもそも理事長は時雨緑と会った事あるんですか?」

「一応はな。まあ、主に私が一方的に、だが」

「ストーカーですか」

「違う。二年前くらいに葬式でな」

葬式、という言葉に少し喉がつまる。なんとも後味が悪い出会いかたではないか、それでは。しかし、一体誰のだろうか。樹来の人間か、それとも――止まる事の無い好奇心たちを抑えては唇をかんだ。
ふと、花弁がひとひら宙を舞う。

「……二年前、といったら彼女が入学する前ですね」

「ああ。ほんとうに、直前だった」
 

過ぎる風景。過去。テープのコマのように、かたかたと音もなく流れていく。
その隻眼に映るのは、黒と白の簡素な風景。この国における、死者が天に昇るための儀式。
其処にひとりの少女がいた。はじめて、彼女の存在を知った瞬間。
彼女の父親とは最近連絡を取っていなかったため、当初多くの驚きの中二番目に少女の事柄が加わったであろう。無論、一番は彼の死であったが。



「――それに、彼女の父上……スイにも頼まれているからな。」

「スイ……――って、あの"樹来栖依"のことですか……っ!?というか呼び捨て……」

「言っただろう、親戚だと。それに彼にはよく色んなことを教えてもらった、実の兄のような存在でもあるしな。」

「………」

名医の名をさらりと、息をするように言った彼に、また下鶴はぽかんと目を丸くするだけであった。
同時に、改めて彼の人脈の広さに圧倒されるのであった。

「………というわけで私は少し席をはずす。後は頼んだ」

そんな感心も束の間、過ぎ去る風。思わず席を見れば既に其処に彼の影は見当たらず。在るのは積み上げられた書類のみ。
つまり、

「――あっ、逃げたっ!」

状況を理解した直後、秘書はまた走り出した。












「――少々、喋りすぎたか」

窓から覗く風景を眺めながら、ひとりだけの反省会。まさか自分でもアレほど口が滑るとは思わなかった。少し、気をつけなければならないか――。

清清しい空の色が目を突き刺した。太陽が、その場にて日輪を輝かしいほどに。
ふと、手繰るもの。浮き出たこと。秘書がぼやいた、疑問。

確かにスイは大切な人物。だがしかし、それとこれとではまた違う問題。
"樹来家"と"風丸一郎太"――すなわち"姫神の血を持つ者"。

「彼の言うとおり、かもしれないな――」

ぽっかりとひとつ、浮かぶ結論。過去の災厄。遠い日の、忘れ去られた記憶。
もしも、彼女が彼の潜在記憶を呼び覚ますのだとしたら………。"引き離す"ことを、しておいたほうがいいのかもしれない。

ぶんぶん。打ち消すように首を振る。違うだろう。それこそ違う。仮にも、彼女は彼の娘だ。
彼から託されたのは、彼女の精神的話だろう。彼女はただの、少し世間に溶け込むのが難しいごく一般の少女でしかない。
それに、彼女も樹来の血は継いで居ない。継いでいたとしても、それは何も関係の無い話。姫神も、もう崩壊した。もう、無かったはずの事柄。
ただの考えすぎだ。それに、姫神に執着しているのは闇野家の方だ。まさか、闇野が此処まで粘り強く七年間も姫神の尾を探っていただとは、誰が予想していただろうか。

眼を瞑り、息を吐いた。少し、休もう。幾ら考えたところで何かがあるわけではない。
廊下が白く、眩しく眼を霞んだ。


「理事長、こんなところにいらっしゃったのですか。」

そんな中、聞こえてきた足音。声に居場所を特定すれば、一人の男性。

「どうされましたか。安達先生」

「いえ、校長先生からお電話が……」

そういえば彼は介護で最近は此処に出勤していない――そういうことかと頷いてひとり、歩き出した。
蝉が一匹転落死した直後であった。













「はぶっ」

「風邪ですか?」

ぶんぶん。そんな覚えは無い。比較的病気というものも、余りしたことが無い。ある意味、健康体なのだろうか。多少の温度変化にも身体に異常を感じた記憶も無い。

「確かに緑さんが風邪引いたこと、無いんじゃないですか?」

「……此処じゃ、たぶん」

「噂でもされたんじゃないのかなあ」

「……それだけは御免だ」

「緑さんを悪く言う人なんていないですよ」

「ただ単に埃吸っただけだろ……。うぐ」

くしゃみの勢いで、その目頭に少し涙が溜まっていた。少し辺りがほのかに赤い。
特に今は多いその髪を纏めている為、彼女の顔が良くわかる。意外と色白だということも、普段は据わっていたりしているけれども、ほんとうは結構金魚みたいに大きいのではないか。やらやら。新たに発掘されるその他もろもろ。

「というか緑さんかなりの美人なんですから、ちゃんと手入れしたりした方がいいですよ。髪とか」

「――戯言はいいからさっさと掃除済ませるぞ。他にやる事色々あるんだろ」

「あ、もう……緑さんはあと少しぐらい自分が女の子だっていう自覚をもってください」

「一応生物上女性ということぐらいは認識してる」

「理屈じゃありません」

「はあ………」

どうしてこうも、自分に関わる人間や何かは毎度そんなことをぼやくのだろうか。緑には未だにわからず、いつも頭を悩ませることのひとつになっていた。
確か彼にも、生前散々言われていた気がする。今でも、正直それは放っておいてほしかった。
はあ。また吐き零すように時雨緑なる少女は項垂れた。

「どうしたんですか、緑さん。顔、真っ赤ですよ。可愛いー」

「は、ななななな何いっ……!?」

わたばたわた。突然のことに呂律が上手く回らず慌て焦る少女を見、くすくすと傍観する修道女。十字架の前騒ぎあう女子ふたり。椅子の彫刻に浮き出た天使が翼をたたむ。
夏だというのにこの教会は、外のことなど知らず静かに涼しげに其処に存在し。水の音さえ聞こえない。

「っ、ふざけるな馬鹿っ」

「別にふざけてなんていませんよ。ほんとうのことを言ったまでです」

「どこが!?」

思わず声を荒げる。うかっかり手元の箒がかたん、可愛らしい音を上げ倒れた。差し込む光は揚々と。ステンドグラスの神々は其れを眺めている。えんじ色のジャージ裾元が跳ねる。
取り合えず話題を変えようと、必死に巡り巡る情報を掻き集め採取。ぽかん。ふとひとつ、そういえば知らないことがあった。

「……っと、いうか何で今日はお前だけなんだ。確かあと二人いたろ」

「……あれ、言ってませんでしたっけ。神奈崎さんと玲名共々理由在りきりで今日は都合悪いって。でも珍しいですね。緑さんが他人に興味を持つなんて」

「……悪いか?」

せっせとちりとりを取り出し、纏めたゴミを其処に放り込んでいく。小さく塵が舞った。
燦々と降り注ぐステンドグラスの光を浴びながら、そんな少女をひとりと大勢の神々眺めていた。

「少し、意外だったから」

そう、小さく笑みを零した。漆黒の双眸が不思議そうに覗き込み。音もかしこも其処にはもう、既に何も無かった。

「でも、嬉しいな。それって緑さんが少しずつでも、人に触れれるようになったってことだもの。」


ほら、またそうやってわらった。







(信じてみると、声にしてみたの)




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