※稲妻4を勝手に妄想。口調・性格は勝手な俺設定。 人間、興味の無いものには全く覚えすらしないが、興味があるものに対してはいらない細かい部分まで覚えているものだと、三国はそう思い馳せていた。 ◇ 「こんにちはーっ!――……って、あ、あれ」 勢い良く扉を開けるのは、ふわふわと特徴的な髪をする少年一名で。現在終礼が終わり、猛ダッシュで部室まで駆け下りてきたのだ。 しかし、其処にあったのはがらんどう。部員ひとりすらも居なく、在るのは無機質な白黒ボールにホワイトボードやらなんちゃら。あと埃くらいだけかと。 不審に思いながらも、その中へと足を踏み入れる彼。まあきっと自分がたまたま早かったのだろう。そう軽快な脳思考がそう割り切る。 さて、そうならばさっさと着替えでもして自主練習でもしようか。あまりにも皆の足を引っ張ることもいやだから。 そう思い、鞄を置き、さっさとロッカーにぶち込む。 重たい物体が壁に当たる音がした。 がたっ、 ふと、何か聞こえたような。ロッカーに荷物が当たった音? しかしよくよく考えればロッカーに荷物を入れた後に聞こえた。これはまた、何かなんというか、多少柔軟性というかそう大きいものが何かに当たる音。たとえば、壁とか。 だがこの部屋にはそんなものは全くなし。似たようなものも、皆無。 ばん、がたっ まただ。また。一体何処から聞こえているのだろうか。しかしこの部屋の中ではないことは確実で。というか其の前に此処には未だ自分ひとりしか居ないのだし。 むう、少し小さく唸り再び部屋中を見渡す。多分、感覚でしか計れないが、多分此処の近く。 放っておいてもなんだか気になるので、取り敢えず散策という単語が脳裏をよぎる。一体どったい全く何処から聞こえるのだろうか。 そうやって、着替えようとした手を止め、部室内を歩き回る。と、いってもそんな広くは無いのだが。というか小さいほうだと思う。 そうやって散策してる間も、少し聞こえる音。 そして見つけました音源。 一分もかからなかった。それはそう。だってその場所へはここらから繋がっていたのだから。 場所はホワイトボードの裏に隠れていた扉。何故ホワイトボードを盾みたいに置いて合ったのが少し疑問だが、取り敢えず見つけた。 何かいやな予感しかしないが、そんなことを言っていてはこれから先どうしろと。無駄に自分に言い聞かせる少年ひとりが、此処に現時点今居た。 ――よし! そう思い切って、ついにそのドアノブを捻る。瞬時、全ての空気が凍ったような気がした。 そして、浮かび上がった華。 「ッチ…――ああ、松風どうしたの。というか此処良く見つけたねー」 ニコニコと笑顔で話すのは、雷門七不思議のひとつである本人。女子疑惑さえも浮上しているピンク色。桜色。(というかちゃんと男だけれども) 「何か聞こえたような気がしますけど霧野先輩。というかその格好で笑顔なるの止めてください。というか何部室で女子ナンパしてんですかっ!」 良く視れば其の体制。誰かに覆いかぶさるような格好。そしてその時折見える黒い裾。多分スカートかと。そこから黒い足がたまに見えている。……其の前に、どちらにしろこの服装、絶対此処の制服じゃないですよね。 「可愛かったから。あ、でも松風には見してやんない」 「何で、」 「あっれ、松風って女の子にきょーみあったんだ?」 「べっべつにそんなんじゃっ」 何何だこの人。そう心中暴れる本人。しかし顔色は全く変化無し。 途中途中なんだか震えている気がするその足。……この人、本気で女子怖がらせているのではないかと冷めた思考が凝視する。 それでも未だに咲き続ける桜。 「ふーん……キャプテンに言ってみようか」 「なっ!?きゃ、キャプテンは関係無いじゃないでひゅかっ!」 「あ、噛んだ。女の子の前で。」 何だろうこの湧き上がる何かは。何か、どろどろと赤いものが沸騰するような、そんな。 取り敢えず、そんな感情やらなんやらを、必死に押さえ込む。頑張れ、自分。 しかし、その瞬間予想もしていなかった、というか最早予測不可能だった事態が起きた。熾きてしまった。黒い桜が芽吹いた。 「俺は女じゃねえええええええッ!!」 わき腹、クリーンヒット。バッター、アウト。 ぱた。ぽふり。若干溜まった埃を巻き上がらせて、倒れる一人。時折、ぴくぴくと陸に打ち上げられた魚のように小刻みする。 しかし、彼女ではなく彼にとってそれは大きな事態の狂いを招くことになっていて。 「……あ、え、えーっと…――キャプテン、ですか…?」 調子に乗って狂い咲き乱れる赤桜を、怒りいかった黒桜がその幹をなぎ倒した。 しかし、その服装――いや何だかんだ全てが問題だった。 黒と白を基調とした太もも上らへんまでのワンピース。白いリボンが時たま眼に映る。 そしてそのほどよく鍛えられた足に黒いソックス。気付けば、その頭にはカチューシャまでついていて。 だが当の本人はすっかり顔を赤くし、自身の先程の行動を思い出したようにすぐさま座って縮こまる。耳までもが色付いて。 其の姿はなんとも艶やかで。同性とかそんなの関係なく、熟す苺。なんだか何処かを猫じゃらしなんかでくすぐられてるような。 「ふぅぁああああっ」 つまり、それはとてもとても並大抵の女子以上に可愛くて。 「うー、俺はただルールに則っただけなのに」 「…どちらにしろ何で俺まで殴られたんですか」 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!!」 黙れ馬鹿共! 正座する二人に、仁王立ちするひとり。 だがその服装が大問題で。 「……負けたの拓人の方なのに。たかが罰ゲームだってのに」 そう、それこそが元凶なのだ。 どうやら彼ら二人はとあるゲームをしていたらしく、それで神童拓人は負けたのだという。 しかしそのゲームは罰ゲームのルールをもうけていたらしく、それがどうなったかこうなったらしい。というかこの衣装は何処から持ってきたのやら。 「……霧野、そうやって拗ねた様にしても俺は何もしねえぞ。いやするとすればもう一発その頭を殴るか蹴るかだ。その自慢の顔ぼっこぼこにしてやろうか。」 「残念だけど拓人、俺はそっち方面もばっちり免疫あるからそんな罵倒されても俺は何も感じないよ。強いて言うなら快感、かな」 「先輩、変態なってます」 「元からだ」 「ちょ、ふたりして酷くない?」 「いつものことじゃないですか。」「いつものことだ。」 そう同時に放たれる、意味が同じ言葉。更に桜は散っていき。 「というか、ゲームってこれまた……。一体何してたんです?」 こんなことになるゲームとは一体。本当何があったのだろうか。 「麻雀。あ、といってもトランプみたいなやつね」 のろりと起き上がる秋桜。ゆらり、風に揺れて。 「麻雀…、あの、麻雀ですか?」 そんなものでこんな事態になるとは誰が予想しただろうか。 再びキャプテンである彼を見る。 やはりというかなんというか、普通に綺麗だ。可愛いともいうべきか。 ひらひらとふわふわと。俗に言うメイド服がこんなにも似合うとは。性別を隠しても普通に通じると思う。というか逆にものすごくモテるのでは。 そう変な方向に伸びた思考を感じたのか、睨む相手。しかし松風からすればそれは全然苦では無く。 でも、正直言うと霧野蘭丸よりも現在の神童拓人の方が若干色っぽく、艶やかで美しい。つまり、今の彼のほうが凄く女性に見えるという。 「……罰ゲーム増やすよ?」 「はっ?馬鹿言うんじゃない。勝負一回につきひとつだろ」 というか一回だけじゃなかったんですか先輩方。 「そうだね。じゃあもうひと勝負する?"神のタクト"さま」 茶化すように踊る淡いピンクの唇。 それに反応する黒猫。 「……お前にして言い度胸じゃないか。いいさ、やってやろうじゃねえか。――松風、お前も入れ」 と、突如指名される自分。 「へ、ええええええええっ!?むっ、無理無理っ!無理です!やったことなんて一度も、というかルールすら全く知りませんし!」 「大丈夫。俺がやわらかく落としてあげるから。」 「右に同じく。」 「何でこんなときだけコンビネーション良いんですかああああああ」 ひとりの断末魔が其の日、青空にも響かなかったそうな。 「何があった」 「取り敢えずキャプテンと霧野、あと松風がいることだけはわかった」 「どうしてこうなった」 「知るか。本人達に聞いて来い」 「えー、キャプテンに殴られそう」 「部活ほうっぽいてる方がいけないからな」 「そういう三国がほんとは仲間に入りたいんじゃないの?」 「……お前ら、グラウンド20周してこい」 (さて、今度は誰を罠にはめようか) |