※ブレイク組+ハリケーン組でバンドパロ。若干年齢操作。
 円堂→ドラム
 鬼道・豪炎寺→ギター
 風丸→ベース
 吹雪→キーボード






ちゃか、
暗く重い天井がある中ぐらいの部屋。そこには大きい箱、スピーカがどっしり構えられ、繋げられた音量拡張機であるアンプがその後ろ存在していた。

ちゃかちゃか、

小刻みに早くなっていく硬い音がぱっと弾ける。

ちゃかちゃかちゃか ばん、どん!

そして最後にはエイトビートになり、一気にずっしりと重みがくる。
改めてステージを見れば手馴れたようにその個人個人のパートを奏でる青年達。
客席からは男女ともに黄色い歓声。それが更に音をしっかりと、重く安定させていく。

「Let's Go!」

蒼い髪が揺れ、同時に聴こえるアルトボイス。

手元の黒いベースが唸りをあげ、
赤褐色のギターが主線譜をなぞり、
紫のギターは早くもなく遅くもなく、
弾けるドラムはその鼓動を刻み、
美しく音を浮き上がらせるキーボードに、

そして、早くも熱狂の渦に呑み込まれる観客たち。


伸びやかに、尚且つ楽しそうにエイトビートを奏でる彼ら。

次第に歌が流れてくる。

彼のその歌声が沿うように、川のように流れていくその律動。

確かに彼の歌はこの全ての空間を呑み込んでいる。
否、彼だけではない。彼ら全ての音が丁度良い具合に絡み合って、解けて、形を成しているからこそこの現状が起きるのだ。

ライトが宙に取り残された汗を煌かす。まるで星のよう。
踊り狂い出す音という花弁。

全てが一体とした空間。

間奏に入ると、それぞれソロになり、その歓声は特に盛り上がる。


複雑でクセのあるリズムをつづるは鬼道。
ピックの残光。まるで水を汲むような容易さで、その音を伝える。

それと打って変わって、しかしそのテクニックは確かで。
同じギターでも全く音は鬼道とは違う、豪炎寺。
ひとつひとつの音が獣のよう。

重く低い音は風丸。体中に響く音に誰もが酔いしれる。
左の指先は器用にまた違う音色を、そしてビートを刻み。

激しく大きく鳴らされるクラッシュシンバル。そしてバズ。
円堂の豪快さも伺える。しかしちゃんと音の一部となりて。

最後には指先で鍵盤をなぞり、音に表情をつけ奏でる雪を思わせる吹雪。
時にはおとなしく、時には激しく大きく。


ずんずんぼんじゃんじゃんじゃか!

そして仕舞いには今までより更に大きく、激しく、鼓動を刻む。
歓声も既に踊り狂い、律動も部屋全体を揺らしていく。


じゃんじゃじゃじゃーん、

最後の最後には吹雪のキーボードの音と豪炎寺のトレモロが響き合って、この曲の終わりを示していた。





* *


「おっつ!」

そう満面の笑みで水を飲み干す我バンドの主将。
ライブハウス、控え室。
「本当にお疲れ。風丸君は特に」
こちらもにこにこと笑顔を振りまく彼。
「っはーっ、ったく円堂!最後の最後に無茶なリクすんなよな」
背中を壁に預け、缶ジュースを飲む。冷たい液が身体の管を通る。嗚呼、気持ち良い。
「いーじゃん、結構風丸もノリノリだったじゃん」
「う……」
まー、そうだけど。疲れたものは疲れた。
そう悪態をついて再びジュースを喉に通させる。やはり冷たい。
ふと、目に留まったのは豪炎寺と鬼道が手にしている缶のラベル。
「あ、それお酒?」
吹雪も気づいたようで尋ねた。
「まあな」
「あ、そっかお前らもう二十歳だもんな」
「円堂もそうだろ」
「やー、俺はまだ飲んでない」
そう言う円堂。
「何だ、風丸は酒が飲みたいのか?」
「絶対止めて」
尋ね返した鬼道にすぐさま制止の意味をもつ言葉を投げ返す吹雪。
「……吹雪はもうすぐ飲めるじゃん」
「君なる前に既に飲んだじゃん、前気づかないで」
「……あん時あんま味覚えてない」
「そりゃ酔って記憶失くしたんでしょ」
交互に交わされるバンドの作詞者と作曲者の会話。その事を知らない残り三人が顔を見合わせる。
「前久々に会った一之瀬君に飲まされた」
「一之瀬来てたのかー。というか其の話詳しく」
「……"飲まされた"のか?」
「うん。ごぶっと、風丸君に」
「アル中にはなるなよ」
「ならないよ。多分」
あと円堂自重。
ごちゃごちゃと、ステージの上とは全く違い温和かなムードの控え室。
「…僕はあんまり風丸君には飲んで欲しくないな。あ、でもある意味面白いけど」
「前後の言動が矛盾しているのが気になるぞ」
「運ぶの大変だけど弄ったら楽しそう」
「吹雪、何か分からないけど全力で止めてくれ」
「ふふ、次酔った時が楽しみだね」
「絶対次酒飲まないぞ俺」
あははは、絶え間ない笑い声。


それから長い刻限が過ぎ、
「さて、帰るか。」
荷物を持ち、立ち上がる。
「なー、風丸居酒屋行こうぜ」
「やだ」
「円堂、思惑が見えているぞ」
「マジ?」
「……別に、ヘンなことしないんならいーけど」
ぼそり、彼には聴こえただろか。この声が。
そして彼の方を見やると憎たらしいほどの笑顔。


最終的に全員集まってリーダー宅で飲み会をしたのは言うまでもなく。



(その鼓動をビートに変えろ)