1day1sss | ナノ



Re:menber

2011/07/23(Sat) 23:58






「しかし君も手加減と言うものを知らないのかい?」


目に見えるは人工的星たちの光。夜の暗闇に塗れては、本来の衛星よりも前に出ており。なんとも明るい夜だ、と思わず彼女の口が言う。
其の中、右手で手元の物体を光らせている人間が零す。モデルと偽っても大体の人間は信じるであろう、細身の彼はぴたり。小さな板状に表示されるパネルを落とし。月が僅かに押しつぶされぬよう主張している今宵。

「ボクにそんなものを求めてる宙も、そんなことを知らないのかい?」

悪戯に引用しては復唱するのは深い藍色のショートヘアーを風に遊ばせる少女。首もとのヘッドホンのコードの黄緑が映える。


呆れて、溜息さえ吐くに吐けない青年。だが、これの性格は今に始まった事じゃないと、すぐに思考を転換させた。
嘲笑うように何処かで赤白のサイレンが走っていく。


「……まあいいよ。ちゃんと"仕事"はやってるみたいだからね」


「やることはやるよ、ボクは」


「じゃあこれから範囲制限でもしたらいいのかな?」


ピピピッ。何回か板の端が緑色の光を瞬かしてプツリ、電源を失った。消した。それはとてつもなくあっさりと。そして何事も無かったようにポケットへと忍ばせた。
相変わらず、目下広がる俯瞰には幾多星の数程の人々の戯言パレード。止む事を知らず、その雨は今だ降り続ける。はたまた、雪のように降り積もる。積もっては溶けることさえ何も見えず。


「これはね、ボクがただぼやいているだけの戯言にすぎないから宙は無視していていいよ」


ただ、そう呟く声。少女はただ、何を見ては下り。坂を投げる。


「宙が今まで傍に居たあの子が、異常なだけだったんだよ。彼女が君の隣にいた時点で、それは奇跡の中の奇跡以上のものだった。よくも悪くも、仕事人としてはまずまずだったろうね。それでも技術は上の上。それはボクも、あの人も良く知っている。」


すう、と吹き返す息。冬の夜は、白く曇って。雪を降らせ。


「――ボクと緑は、同じだけれども全く違うものなんだよ。」





そして少女は飛び降りた。



(もう、随分時が経ってしまった)






prev | next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -