1day1sss | ナノ



リフレインリピートノイズ

2013/02/15(Fri) 21:34






黒い水面に、一滴雫をぽたり落っことす。
ぱっと花が美しく時には柔らかく咲き誇るように、幾重もの色が重なっては線をなし吸い込まれるように溶けていく。
覗くステンドグラスが反映して、これまた美しく陰るのだ。きらきらと、星が弾けるように。熟しておらぬ幼い娘が身体を起こすように。光は散らばった。それは夢にまで見た幻想卿。生き蠢く色たちはその中音も立てず心臓を鳴らしていた。
くるくる変わり、矛盾するせかいにひとり。ひとりぼっち。ふたりぼっちを引き裂いて。裂いた咲いた華には水を忘れずに。ぱらぱら夢見がちのクラゲに触れたかった。クラムボンが笑った。「さようなら」と弧を描いたは誰の指。

「さてどうしようか」
甘ったるいような、噛んだ後のようなガムのようで、はたまたしゅわりと喉元通り抜けていったサイダーのように。初めて生まれた音が、私に向かって放たれた。
振り返る。瞳はただひとつだけを捉えて。ピントがぶれては自動修正された。
キャンパスからしたりはみ出た絵の具のような彼はまた、人差し指で弧を描いて見せた。
光と色が緩やかに混ざっては消える。

そんな彼と言えば、その「顔」を掌で掠める度色を飽きずに変えるのだ。
いち、にい、さんしのごうろく。双六が適当に数字を足元に染み込ませた。
そして私はその輝かしいせかいで、ひとり退屈そうに再び瞬きを繰り返した。
「どうもこうもしないだろう」
このせかいには不似合いすぎるほどふてぶてしく私は嘲るように言い放った。するとまた「顔色」を変えてはいい加減な彼は笑うのだ。
「はてさて、なにがどうどうもしないのかな。僕にはまったくさっぱりわけがわからないや」
踊るようにステップを踏む。たったっと彼が跳ねるたび赤や青の点が枝分かれに水面へ揺れた。
そしてこのせかいが、それらが成り立たせるものが次第に輪郭を帯びてきた。色とりどりの線は染みて世界に色を浮かせ。泳ぐ色たちは「夜の街」を具現化させていく。触れられぬ街を、彼はこの空間に作り上げた。夜にも似つかわしい風景を背に。
嗚呼、なんて下らなくて嘘つきな街なんだろう。

けろり。なにも知らぬ見ざる聞かざる言わざるはぶらかして「色」は踊る。
「そうだね、この街という世界を駆け巡る鬼ごっこでもしようか。嗚呼、でもキドだとすぐ逃げ切れちゃうから鬼はキドがいいな」
子供騙しの安っぽい約束のように、揺れながら「仕方が無い」と手を振りかざす。
遠い昔のように思える記憶が微かに夜の匂いを香らせた。青く燐と燃え盛る色を転がし月は細く目を閉じる。
幼い頃、よく私と彼は遊んでいた。きっと、遊ぶことに夢中な子供らしい子供だっただろう。その中で「おにごっこ」なんて珍しくも無く、逆によくやっていたと思う。
嗚呼そうだ――わたしが変わってしまったあの日から、さらにその頻度は多くなっていたような、気がする。それは、彼が私を見つけるための練習でもあり、私にとっては私を、私という存在の「色」を再確認できるまるで儀式にも似た「御遊び」だったのだ。
鬼はカノ。逃げるのはキド。
いつもそう決めて、ふたり追いかけ返されぐちゃぐちゃに夕暮れが色を変えるまで転がっていたのだ。

それを、今度は。
「―――ねぇキド。さて君はどの僕≠捕まえれるかな」
くすり。皮肉のように嘲って。ばっと水面の色が弾けた。波が街を掻き回して、色はあちこちへ散らばった。そして、似たようなひとがたを謳っては笑い出す。
そしてその光景に、私は思わずくしゃり笑い出した。こみ上げてくるこの感情はなんだろう。目には見えぬ色に戸惑いは淡く消えた。
真っ黒な球体の中に閉じ込められたような閉鎖感。響く声はそれをさらに浮き彫りにさせ。
――――鴉色の世界の中。私と同じ瞳の色をした夜の中。その顔はぐにゃりと歪んだ。

「鬼はもう、隠れることに飽きたんだ」





(だから私はもう貴方から逃げない)

+++++++++
カゲロウプロジェクト
カノとキド

ディセイブ楽しみすぎて吐血






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