1day1sss | ナノ



定義付けのアイロニー

2013/02/05(Tue) 21:44






さらさらと燐く砂は零れ落ち。電灯に照らされては夜の中に消えてしまった。まるで忘れて逝く想い出のようで、きゅうと胸が締め付けられた。
落ちる砂の先に、もう割れてしまったガラス玉が腕を広げている。そして砂を浴びるその姿は、なんとも浄化を願う信者にも見えた。
それとも、星の輝きを纏った両翼か。

「キドはさ、」
余所見をしていた思考は無理矢理戻された。ふとひとつ。瞼瞬けば、淡い光に撫でられた顔が薄ら見えた。
「なんでいつも僕に抱かれるの」
そう、わからないと彼は首に噛み付いた。なんて、子供のように細く柔らかい髪に触れる。するりふわり、風を掴んだような錯覚を起こした。
「……お前は理由が欲しいのか」
「ふと、思っただけだよ」
締め切ったカーテンの向こうから雨が窓を叩いている。嗚呼、いつの間に雨なんて降っていたんだろう。やっと、今気が付いた。
砂は流れる。
落ちて、零れ、下っていく。壊れた砂時計は設定外の時間を指折り数え消えたいそうだ。
「人なんて、理由があれば安心するものだよ」
「じゃあお前は今安心出来てないのか」
「そういうわけじゃ、ないけど」
夜の真ん中。痴態を曝す男女ふたりぶんの重さを受け止め、ベッドはぎしりと声を上げた。
彼の琥珀色の瞳は、濁っている。
「なんだよ女々しい。言うならさっさと言え」
「わぁキドイケメン」
「煩い」
悪態を突いて軽く突き放した。今更だけども、淡い電灯を消したい。でもリモコンは手を伸ばしたくらいでは届かなかった。
「僕はホラ、こんな人間だから。キド傷付けてばっかだから、ふと気になっただけだよ」
いつものようにへらりと笑う。その細やかな表情は、視界が悪いためよくわからない。
「ふぅん」
「……ふぅん、て。それだけ?」
「それ以上に何をお前は俺に求めていたんだ」
「いやぁ、そんな。なんかよくある"わあカノそんなに考えてくれたのね"的発言がやってこないかと男子としてはふと淡い期待をですね」
「残念だったな乙女っぽくなくて」
呆れたように腹を殴ると小さく痛そうな声が落ちた。知らぬというように吐き捨てる。

砂時計は粉々になってしまった。きらり輝くそれは星に似ている。
青い海のような色。頭を出した赤い呼吸。浮かび上がり海月は空へ還る。
どろりと吐き出してしまいそうな混沌を、飲み込んでは兎は泣き出した。

手を、伸ばした。
その先には、愛しい身体が有った、或った逢った暖かい。微かな電流が指に通る。
そして、手探りでその身体を抱き寄せる。海月は海底に沈み込む。抵抗することもなく2つの身体は夜に溺死した。電気抵抗はぷちりと音を立てては弾けてしまう。
「この身体に、腕に触れてみろ。ほら、傷なんて無い。あってもそんなの、すぐに塞がっちまうんだ。……それに、そもそも好きでも無い奴に抱かれる趣味なんて、こちらとら皆無なんだから」
自分でも、恥ずかしいことを言っていることはわかっている。それでも滑り出してくるのは何故だろうか。相手が彼だからか。よくわからぬ口元に海月は首を傾げた。クラムボンは笑い出した。花のよう。
「理由なんて単純だ。」



星の海、海月はそっと水面に口付けた。





++++++++
カゲロウプロジェクト
カノとキド






prev | next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -