1day1sss | ナノ



寄り道神話

2012/02/12(Sun) 11:43






鼻を突く臭いに思わず息を止めた。
舗装された道には、ひとつひとつ何かが転がっていた。暗くてよく見えないが、目を凝らしよくよく見れば、それらが人体の一部だと気がついた。頭や、首。いろいろもろもろ。バリエーションは無駄に豊か。

そして、何かと眼があったような気がした。

「っは、」
隣で、少女が嘲る声がして、思わず視線を変えた。
「……緑…?」
彼女には、この暗闇がはっきりと昼間のように見えるのか、突然迷いも無く歩き出した。長い髪が波のように流れては、くらりと世界を歪ます。

「―――随分とまぁ、暇人なんだな」
ぐちゃり。そこら辺に転がっていた首を彼女は踏み潰す。飛び出した中身が無残にも更にそれを悲惨な姿に昇華させた。
だが彼女は気にしない。足元には腐敗した血がこびり付く。それでも、彼女が通る道の上にあるのならばそれはなんだろうと関係無いのだろう。その優雅さはまるで雑草を踏み歩く光景によく似ていた。

「切り口や状況からして、鋸かチェーンソー辺りか。しかも、全部生きたままだなんて――そこそこ面白いことをしでかすじゃあないか」

今、何と言った?
けらけら。からから。嬉しそうに楽しそうに彼女は哂う。ぱくぱく。好物のパンを食べながら彼女は嘲笑う。
ある意味、此処に明かりが無くて良かったのかもしれない。もしかすれば、景色は思っている以上にグロテスクなものじゃないのか。そして義理の妹である"時雨緑"は気色が悪いと貶すことなく、ただ歩いていた。何時ものように、異常なく自然に。だがそれは、異常であるが故の行動でしかないのを、自分は知っていた。
「――――。」
自分が怒る必要は、無い。それは善悪の区別もつかない幼子に叱っても意味が無いのと同じで、彼女にはそんな境界線等初めから存在してはいない。
彼女にとっての正常は、周りから見れば異常でしかないのだから。

かつり、かたり。かつりかつり。
さっさと去り行く彼女の後を追いかけた。
死体の花はあちこちに咲いていた。所々錆びた鉄が床から覗かせる。どうやら、先に進む程この建物は骨組みだけに成って行く建設途中のものらしい。だが、今自分たちがやってきた所はちゃんと、"建物"として成り立っていたことから、ここら辺りからはまるで無理やり取って付けたような不自然さが際立っていた。
かつん。
音が止んだ。緑の足音が不意に消え、思わず彼女の前方を凝らし見た。
あぁ、世界はどうやら歪に歪むのが好きらしい。

「ほら、みつけた」
猫のように、幼子のように、少女は嬉々とした。


(すべてはきまぐれ)






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