1day1sss | ナノ



We can fly

2011/07/20(Wed) 12:22






なあ神童。


掛かる吐息。降っては消えて。頬を掠める雪が冷たくて、火傷をしてしまいそうで。
上がる目線。琥珀色に映る赤桜。もう、その蕾が開くことはきっと無いのだろう。嗚呼、蜃気楼の夏の夜の下。
背中に伝うコンクリートの温度。昼には鉄板のようであったそれさえ、月が存在主張を開始した頃にはもう氷に似通って。


そんな中、季節外れの雪が降る。しろく、泡のような泡沫。気づけば、赤い海に解けては染み込んで。もう抜け出せないんだ。いつの間にか、片腕は意識を断ち切っていて。


「ひとってさ、笑っちまうほど脆いよなあ。たった捻っただけで鼓動が止まるんだぜ?哀れだよな。首を折っただけでも終わっちゃうんだ」


はにゃり。弧を描く片羽蝶。番の身体を捜しては彷徨うアゲハ。夏の今宵、ただ彼は羽を見定めては潰して。ぐしゃり、遠い昔の音が聞こえた気がした。


ただ、見える彼の身体。その胴体には、普段は視えていなかったであろう形が彼を彩り。片羽蝶の刺青。血を濡らせば浮き上がる其れは、恐ろしいほど艶やかで。塗れた唇に舌が這う。


其れを、静かにもう一人は眺めているだけで。ぽたり、堕ちては頬に伝う赤。しう、と張り付いて絡みつく糸。其れは、はたしては涙のようにも見え。


「でも、神童は俺の羽だから綺麗にするよ。」


そうやってまたあの日のように笑うひとり。


ぺちゃり。はたり。ただもう、そんな顔を見たくないから、ひとり手を伸ばした。蛹が殻から這い出た。小さく、静かに。


「じゃあ俺はそんなお前の羽を剥ぎ取ることにするよ。霧野」


ふと、赤桜の首を両手で掴んだ。


(君が世界を壊すなら、僕はその皮を被ろうか)






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