1day1sss | ナノ



混沌パイプ

2011/09/01(Thu) 17:05






なんという悲劇だ。瞬間、そんな感想が自分の中に迸った。
「嗚呼愛しのウェルベーゼ!……こんな姿になって………」
「……ホルマリン漬けがひとつ無くなっただけだろうに…」


とある仕事の為少女に託していた蛙であったそれは、見事に煤け四肢は行方不明更に異形な形へと進化を遂げていた。魔法の、魔力に変わるものであったから仕方が無いのかもしれない。それでも男は、その遺体を頬にすりつけ遺憾の声を啜り上げていた。相変わらずだ。呆れ返る少女を余所にその行為は止むことを知りもしなかった。
「なーにが"愛しのウェルベーゼ!"だ!オレが使うまでどうせ生き沈めか生き埋めみたいなようなもんじゃなかったか。ホルマリンなんて。きもッ」
「それがどうしたとでも?愛に生死なんてものは関係ないだろう。――それに、この世は君が思っているような"正常"なんてものは無いんだよ」
「うるせえ死体愛好家」
「………はあ、やれやれ。全く。君はもっと世間を知るべきだ。宙もこんなのに関わっていると思ったらヘドが出るよ。」
「あいつこそ正真正銘のキチガイだ」
「おや。"死体愛好家"を変人と呼ぶのならば、君にとって彼は常人では?」
「まさか。何を言い出すかと思えば」


くるくると繰り出す言葉の塊。舌の先飴玉のように転がった。白い実験机に腰掛謳う鳥の歌。
長く薄い色の髪が風をとりまいて。
明かりも無い部屋の中。カーテンの隙間差し込む光淡白く部屋の中せかいを裂いた。


「生きようが死のうが関係無い。とにかくお前等が常識どころか世の中から外れているのには変わりないんだよ」
「………まあ、否定するつもりはないさ。一応自覚済みだからね」
「へぇ。なのにまだ此処に居るのか」
「この道を外れるという選択肢は生憎存在していないしね――それに」


フラスコに映るは歪んだ視界。ちぎれそうに細くなるふたり。金魚がゆらゆら。水の中から覗く日々。
笑うように彼女は咽元紐解き。眼に痛いほどの赤い舌が白に映えた。


君だって道を外すどころか、溝に落ちた溝鼠じゃないか。




(さあ、あなたはどちらでしょうか)






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