1day1sss | ナノ



パズル

2011/07/25(Mon) 13:25






例えば、それはそんなことでもよろしいのです。
貴方が触れた言葉ばかり、僕は寄せ集めては、ひとつの[貴方]という絵を完成させていく。
あれこれと、貴方の傍で落ちた種を拾っては、花壇に植えては水をやり。
目を瞑ってでも貴方を感じられるように、いくつもの身体を欲し。


腕は、貴方の袖口を掴む為に。
脚は、貴方に追いつける為に。
瞳は、貴方の姿を堪能する為に。
声は、貴方に僕の想いを記号化する為に。
指は、貴方に触れる為に。
耳は、貴方の音を少しでも拾える為に。
僕は、貴方を愛す為に。


これほどの欠片を掻き集めては、額縁の中に寄せる。其の色は、とても色鮮やかで。感情を失ってしまうほど。これほど、貴方は僕の中でずっと偉大な存在で生き続けている。
なのに。
ひとつだけ、丁度真ん中のピースだけ見当たらない。どうして、だろうか。そのせいか、完成された他のパーツが脆く、ぼろぼろと落ちていくような幻を垣間見る。なぜ、なんで、嗚呼、どうして。
わからなくて、僕はまだまだ拾っては寄せ集める。あれだ、こうだ、これだ、ちがう。それでも積もるものすら見当たらず。なんでだろう、どうしてあとひとつが見当たらないのだろう、か。
もしかしたら、もう一度最初から創ればわかるかもしれない。完成、するかもしれない。


だから、彼は全てを一度壊した。ばらばらに、リセットした。もう、跡形も何も残らず。ただ目の前広がるのはピースの山。塵にも良く似た、欠片の残骸。
そうしてまた、それをひとつひとつ手にとり、貴方をまた象る作業に戻った。


真っ白な、否何も無い空虚の中。何にも属さず、浸らず、歪まぬキャンパス。そこに、ひとつひとつ粉々になった欠片をしきつめていく。
貴方の傍にて咲いた花を、摘んではぺたりと貼り付けていく。
それでも足りないのならば、僕の一部を此処にうつそう。貴方の傍には、僕が居て。願うもの。


段々と、僕の中で完成されていくアート。最初と比べると、それはとても艶やかに美しく。僕のこころを満たしていく。
貼り付けたことば。こえをのせて。


腕は、貴方を掴む為に。
脚は、貴方の四肢を潰す為に。
瞳は、貴方を見つめる為に。
声は、貴方に届く為に。
指は、貴方を愛撫する為に。
耳は、貴方の声に浸る為に。
僕は、貴方を曖す為に。



なのに、どうして、また。貴方は僕の中では完成しない。貴方は、またぐちゃぐちゃにぼとぼとと崩れ、壊れて行く。幾らやっても、完成はしない。あと一歩のところで、あと、ひとつ。
今回は、僕の全てを差し出した。何もかも。それでも、貴方は僕の前に全てを曝け出さないという。咲いた花も、裂いては枯れた。鮮やかに見えていた今も、最早色すら何もわからず。ことばさえも、失った。
ほんとうに、どうしてだろうか。僕は、貴方にとって何がどう足りないのだろうか。もし、応えられるのならば、どうか応答してください。僕一人では、悔しいかな何も手がかりすらつかめないのです。
ねえ、ねえ。


「あなたからのあいを、ぼくにください。かぜまるさん」





(相違堕落)






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