結城の黒い携帯電話の着信音が鳴り響く。

掃除していた手を止めて携帯の通話ボタンを押す。


「もしもし。結城です」

「結城さん?私、海常寮の中村ですけど」

「ああ。中村さん。どうなされたんですか?」

「実は・・・」

「え?」




夕方。汗まみれのままお腹を空かせた誠凛寮生が帰って来た。


「ただいま帰りましたー!ってあれ?」

「結城さーん・・・って真っ暗」


普段明るい寮は闇に包まれて真っ暗。

寒くないようにと暖房がいつもついてるリビングはその暖房の音すらしない。

そして、極めつけに結城の靴がないのだ。


「結城さん、もしかして出ていっちゃったのかな!?」

「ダァホ!そんな縁起でもねぇ事を言うんじゃねえ!」

「そうよ!たとえアンタたちが頼りなさ過ぎて愛想尽かしたのかもしれないし」

「俺たちが・・・頼り・・・愛想・・」

「わー!火神泣くなー!!」


相田の一言で余計に混乱。

火神や1年トリオはポロポロと涙を流す始末。

流石に黒子も動揺を隠せないのか瞳に不安が伺える。


「あらら。みんなの方が先に帰ってきちゃったのか」

「結城さん!?」


聞こえるはずのない玄関の外から聞こえる結城の声。

急いで振り向くと大きな荷物を抱えた結城が息を切らして立っていた。

近くにいた火神と水戸部は慌ててキャリーオーバーしている細い腕から荷物を預かる。

黒子は背中にべったりと抱きついていた。


「ふぅ・・・火神くん水戸部くんありがとうね」

「いやこれぐらい当然っすよ。つーかどうしたんすか?今日買い物の日じゃないっすよ?」

「あー・・・うん。そうなんだけどちょっと」


歯切れの悪い言葉。

結城が曖昧な返事を初めて聞いた誠凛寮生は不安を覚える。

まさか本当に相田の言う通りになったんじゃないかと。


「とりあえず中に入ろう?体冷えちゃうからさ。リビングでちゃんとお話するから、ね?」




 




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