歩 Side


あれから1週間経った今でも俺たちはビクビクしながら仕事を続けていた。

いつ現れるか分からない恐怖が俺たちを襲う。


「ねー結城くんたちにお願いがあるんだけど」

「なんですか、伊藤さん」


同じ病棟の看護師の先輩、伊藤さんが小さな包みを持ってきてこっちに来た。

もしかして俺たちにプレゼントかな、ゲヘヘとか思ってみたり。

でも現実はそんなに甘くなかった。ちくしょう。


「産婦人科医の黄瀬先生に渡してもらいたいの!」

「はぁ?」


真白が何言ってんだコイツみたいな顔をする。

俺も今涙出そうだった。どうして黄瀬先生なんだと。

しかし、女の子の頼みは断れない俺は伊藤さんの願いを聞き入れ小さな包みを受け取る。

伊藤さんは上機嫌で「じゃあ私上がりますね。お疲れ様です!」と言って帰っていた。

可愛いなぁ。あの先輩なら摘便されても俺いいわ。


「何厄介事頼まれてんだよ、バカ」

「だって女の子の頼みだからしょうがねーじゃん」

「はぁ・・・お前1人で行けよ。俺パス」


真白は休憩室からカバンを持ってナースステーションを出ようとした。

その時、


「何がパスなんスか?」

「き、黄瀬先生・・・」


黄瀬先生はナースステーションの机に肘をついて満面の笑みを浮かべていた。

くそっイケメンめ。滅びろ!

けど、ナイスタイミングだとも思って俺はさっき伊藤さんに渡された包みを黄瀬先生に渡す。

黄瀬先生はその包みを見ると目を細める。くっそ怪しい。


「キミたちありがとう。お礼がしたいんだけど何がいいスか?」

「いっいえ。俺らは別に何もしてないんで伊藤さんに・・・」


俺がタジタジになってる瞬間、真白は帰ろうとダッシュを試みる。

あっ!アイツなに裏切ってんだよ!

しかし、黄瀬先生は後ろにもう1つ目を持っているかのように真白の腕を掴んで逃がさない。


「じゃあ俺の所来てくださいっス。お茶でもいれるんで」

「いっいや・・・本当に結構なんで」

「そうそう」

「遠慮せずに。行くっスよ」


グイグイと無理やり引っ張られて俺たちはナースステーションを後にした。

後ろ手に引っ張られていたせいで気づかなかった。

黄瀬先生が獣が狩る瞬間のような鋭い目つきで下で上唇を舐めていた事に。




 




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