「いってきまーす!」

「いってらっしゃい。今日のおやつは伊月くんの好きなコーヒーゼリーだからね」

「えっ本当ですか、水無月さん?」

「もちろん。だから今日も頑張っておいで」


8時すぎ。皆を玄関まで見送る。

うん。みんな元気いっぱいだ。


「さてと。やるか!」


風呂にトイレに廊下掃除、洗濯物、夕食の仕込み。

寮父の1日は始まったばかり。

腕まくりをして寮の中へと入っていった。




Another Side


「今日の誠凛のお弁当のメインなんスか?」

「見せてもいいですけどあげませんよ」

「えー!ちょっとぐらいくださいよぉ〜黒子っちぃ〜」


昼食の時間。仲のいいバスケ部はみんなで揃って屋上、もしくは食堂で食べるのが定番になっていた。

親睦を深める、というのは表上の目的で本当の目的は誠凛の寮父である水無月のお弁当を分けてもらう事である。

本来であれば昼食は購買、もしくは食堂、自炊で弁当なのだが大体の生徒は前者2つで済ます方が多い。

しかしその中で誠凛寮の生徒は全員が弁当なのだ。

聞くところによると寮父、水無月による手作り。

一度彼の食事を食べると他のものが食べたくなくなる、そう言ってもおかしくないぐらいに彼の料理は美味しい。

他の寮へ立ち入りを禁止されているため水無月の料理を食べれるのはこの昼食の時に限られているため他の寮生は必死なのだ。


「なー日向ぁ〜。その玉子焼きくれへん?」

「嫌です。今吉さんにあげるものなんてありません」

「日向。俺でもダメか?」

「うっ・・・笠松さんでもダメです!」


日向は海常の寮長笠松と桐皇の寮長今吉に挟まれ、


「伊月さ・・・」

「あげないよ。これは水無月さんが僕たちにくれたものだからね」


伊月も木吉もそれぞれ搾取をスルーする。

火神なんかはそんな声を上げさせない、と言わんばかりに弁当をかきこむ。


「テツヤたちはずるいよね。水無月さん洛山にくれない?」

「嫌です。水無月さんは僕たちの寮父さんなんですから」

「誠凛で独り占めとか許さないのだよ」


他の寮のフォローではないがちゃんと他の寮母、寮父さんもよくしてくれている。

が、しかしどことなく事務的義務的に捉えてしまうらしい。

水無月は兄のようにはたまた母のように包み込んでくれる。

いくら高校生と言えどされど子供。

滅多に会えない家族の寂しさを水無月がカバーしている。

それが誠凛を覗く他の寮生にとってどれだけ羨ましい事か。









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