「はぁ〜。いつ見ても大きいなぁ」


明朝。結城は小さなカバン片手に海常寮の前にいた。

前日に渡された鍵を使い中に入る。

この寮では人数が多いために結城は調理に入る事はない。

ちゃんと食堂のおばちゃんがいて作ってくれるのだ。

ここでの寮母の役目は万が一のために備えるというものらしい。

廊下などの掃除、風邪や怪我などで病院へ通院や、相談相手、後はお金に関する処理などだ。

かといえまだ明朝で掃除器の音を立てるわけにもいかず、寮監室にでも行こうかと足を進めた。


「あれ・・・?」

「あっ結城さ〜ん待ってたんスよ〜」


寮監室へ向かうとそこには黄瀬がいた。

正確に言えば黄瀬だけではなく笠松や森山、早川もいた。

まだ暗く肌寒い時間なのに普段着に着替えている4人。

普段は制服か練習着でしか見た事がなく、見違えるような色男だと結城は思う。


「結城さーん!」

「わっ!?」


黄瀬は結城の体をギューっと抱きしめる。

ふわりと香る香水の香りは結城をドキドキさせた。

周りに助けを求めると笠松が1つため息をついて、綺麗な蹴りを黄瀬に食らわす。

黄瀬は綺麗に吹っ飛び、その様子に結城はただ唖然としていた。


「すいません。コイツのリードちゃんと持ってなかったばかりに」

「ううん。ありがとう笠松くん。わざわざ俺を出迎えてくれたの?ありがとう」


結城は笠松の頭を撫でる。

頭を撫でられて笠松は耳まで真っ赤になり、俯く。

森山はそんな様子を見てウブだねぇ〜と笑った。

動かずまるで屍のような黄瀬の顔を早川はしゃがんでツンツンっと突っつく。

明朝、お腹を壊した寮生が薬を貰いに寮監室へ向かったが中々見られない光景が広がっており腹痛なんて何処へやら。

ずっと携帯でその映像を撮影しつつ様子を見ていたのだった。


「えっあの人誰!?というか笠松くんが可愛いんだけど!)」




(今日はずーっと一緒っスよ!)

(黄瀬ぇ迷惑かけんなつっただろ!)

(えっとえっととりあえず寒いし中に入ろう?ね?)

(寮監室って初めて入るんだよね〜)

1日海常寮父、始まります。




 




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