「行ってください、結城さん」
「カントク!?」
海常寮へGOサインを出したのは男子バスケ部のマネージャー兼監督業の相田だった。
その言葉に一斉が相田の方へ向く。
「アンタたちも1日ぐらいでガタガタ文句言わないの。男でしょう。でも、早めに帰ってきてくださいね?」
約束ですから、と結城と指切りを済ませる。
「相田さんありがとうね。うん、できるだけ早く帰ってくるよ」
「・・・絶対っすからね」
「黄瀬くんには気をつけてくださいね。彼手が早いですから」
「それを言うなら森山さんもだろ」
「・・・・・」
「笠松さんも注意だって水戸部が。つーかバスケ部全員注意してればいいと思いますよ」
「う、うん・・・分かった」
かくしてようやく明日海常寮へ向かう事が誠凛寮生にも認められた結城。
全く違う環境で自分はちゃんとやっていけるだろうか。
そんな心配をしている中で、海常寮にいる男子バスケ部の部員は談話室に勢揃いをしていた。
「いいか。明日は山崎さんの代わりに結城さんが来るぞ」
「結城さんと1日過ごせるとか夢のようっスね!想像するだけで鼻血でそうっス!」
「お(れ)、結城さんのメシ楽しみ!」
「このまま結城さんウチの寮父になればいいのになぁ〜。これもまた運命ってね」
期待に胸をはせ、各々の明日のプランを語り合うバスケ部。
もちろん他の部活や、帰宅部の寮生もいるわけで平均身長を軽く超えている男子が固まってキャッキャうふふと語り合う姿はモザイク物だったと後に語る。
一見常識人な笠松でさえもこの暴走を止めないあたりが恐ろしい。
「お風呂は俺が結城さんと入るっス!」
「いーや主将の俺だ。疲れてるだろうからな。広い風呂場で背中流してやるんだ」
「そんな事言ってどうせ笠松肌に触れたいんだろ?あーあ。これだからムッツリは」
「なっムッツリじゃねー!」
何か楽しみでもあるのだろうか。頭に?マークを乗せて遠巻きに様子を見ていた。
こうして今生の別れかのように就寝時間までずっと結城にベッタリな誠凛寮生と明日が楽しみで眠れない海常寮男子バスケ部の土曜日の夜が過ぎていった。
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