「ええええー!明日海常寮にぃぃ!?」

「うん。山崎さんがお休み欲しいからって」


熱々の水炊きをはふはふつつきながら食べ始めた頃。

結城は意を決して伝えた。

海常寮の寮母の山崎が田舎に住む姪の結婚式が明日あるらしく、それに出席したいから海常寮へ来て欲しいとの事。

明日は結城の休みにあたる日。誠凛寮の事はしなくていいので二言返事で了承したのだ。


「ちなみに明日はいつ帰ってくるんですか?」


硬直が一番早く解けた伊月が恐る恐る聞く。

伊月の言葉にハっとした日向や相田もウンウンと首を上下に振り結城の方を見た。


「えっと門限が8時までで、9時の点呼して終わりだから10時頃には帰って来れるかな?」

「10時・・・」

「ほぼまるまる1日じゃないですか・・・」


ずぅぅんと項垂れる誠凛寮生。

忙しい結城とゆっくり戯れれるこの休みの日は彼らにとって貴重な時間。

その時間が邪魔されると思うと怒りや悲しみがどっと溢れる。


「これだったんですか。黄瀬くんが今日やたらテンションが高かったのは」

「あー。そう言えば」


黒子の目は座り黙々とキノコを食べる。

普段は表情を映す事はあまりない顔に『デルモブッコロ』と書いてあるように見える。

もりもりリスのように食べる火神も手を止めて、今日あった不思議な事を思い出していた。

というより黄瀬だけではなく海常寮生がどことなくおかしかった。

まるで遠足の前日の夜の子供のような様子。

ソワソワ落ち着きなく昼食を食べてる姿は誰が見ても怪しかった。

試しに小金井が近くにいた森山に聞いては見たが「明日楽しい事があるんだ」としか教えてはくれなかった。

そして蓋を開けてみればこれである。

たった1日いないだけでもこんなに寂しくなるものか、と驚くぐらい誠凛寮生は沈みいつもガヤガヤ煩い食卓はまるでお葬式のようだ。

そんな様子に結城は自分の軽率な返事を悔やんだ。

自分はこの誠凛寮の寮父であるのだからその寮生を悲しませる事をしてはいけなかったと。

しかしこんな遅い時間に断りの電話を入れる事は非常識である。

ましてや電話での結婚式の話をしていた山崎の声は楽しそうだった。その楽しみを奪いたくもない。

どうしようか。そう結城の内心で悩んでいた時にひとつの声が上がった。









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