「ダメに決まってるわ!」

「水無月さんは物じゃありません」

「緑間くんまだ探せばいるでしょう?だからお引き取りください」


誠凛寮生は断固反対の声をあげる。

もちろん秀徳寮生は断れるのを覚悟で来ていた。

無理もない。緑間のラッキーアイテムとして水無月を1日貸して欲しいなど過保護で有名な誠凛寮生が黙っているわけがない。

しかし緑間の様子を見ると今にも死にそうな顔をしている。

話を聞くと、箸を拾おうとして屈もうとしたら座っている椅子が壊れ、

ドアに挟まれそうになり、鳥の糞をかけられ、

何もない所で躓き、普段は通らない場所に車が通ってきてあわや轢かれそうにもなった。

前からラッキーアイテムの事は緑間から聞いていたがここまで酷いとは思わなかったと3年トリオは青ざめ、一番ピンっと来たのが水無月だと説明した。

中谷は大坪から呼ばれ来てみるといつもの我が儘エース様の面影はなく、まるで水で顔が濡れたア●パ●マソのようだったと中谷は語る。

水無月は困惑している。

自分は誠凛寮を任されたのだから短期間であっても寮を離れていいものかと。

しかし緑間の様子を見る限りではただ事ではない。

寮の安全かそれとも1生徒の命の問題か。

どっちも大切なもので天秤にはかけられない。

が、水無月は1つの答えを出した。


「あの・・・部活までだったら。夕御飯の支度もしないといけないので」

「水無月さん!?」

「全然いいですとも!水無月さんはそれで本当にいいですか?」

「はい。あ、でも今片付けしなきゃいけないのでそれからでいいですか?」


勿論だ!と大坪と中谷は喜ぶ。

後ろで宮地や木村もほっと一安心していた。

高尾は嬉しさのあまり緑間を抱きしめすぎて、緑間の口から何か出てきているのに気がつかない。

秀徳寮生が喜ぶ中、誠凛寮生は絶望の底に叩きつけられていた。

まるで自分たちよりも緑間を取られた気がして今にも自殺しそうな勢いである。


「ね、皆・・・」

「なんですか、水無月さん?」


誠凛寮生は絶望を瞳に映し振り向く。

すると皆まとめてギュッと抱きしめた。


「俺は皆の事が一番に好きだから安心して。別に皆よりも緑間くんを優先したわけじゃない。でも命に問題が出てきそうだったからだよ。ね、今回は許して?」

「水無月さん・・・」


ね?と最後の念押し。

誠凛寮生は渋々頷き、緑間に睨みを聞かせる。


「水無月さんのお願いだから聞いてるわけであって、部活ん時覚えてろよ」

「何か悪さしたらイグナイトかましますからね」

「今日は秀徳さんにリコ素敵なトレーニングプレゼントするわ」


全員顔に【後で覚えてろよ】と書かれてある。それは1年トリオもだ。

秀徳寮生はのちに地獄を見たと語っている。









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