しかし、不思議な事に今この場に俺と歩、そして赤司先生しかいない。

まるで仕組まれているのではないかと思うぐらいできた環境だった。


「この手で何人もの患者を救ってきたんだ。もっと誇りに思うべきだと思うよ、僕は」

「あーそうですかそうですか。だったらそんな神聖な手に触らないで下さい」

「本当に2人はつれないなぁ」


今度は机においてある歩の左手をそっと指から手首の方へと撫でる。

歩はすぐに手を膝の上へと戻した。

その姿を見て赤司先生はクスクス笑う。

俺らはアイコンタクトをし、赤司先生にかまうことなくラーメンとうどんを食べ進めた。

一刻も早くここから逃げたくて。

食べる事に集中したのがいけなかったのか、白衣越しにスッっと膝から太ももにかけて赤司先生は足を撫でた。


「!?」


ガタン!

箸がお盆に落ちる。

いきなりの物音に歩も驚いた表情をした。


「どうしたんだよ、真白」

「な・・・なんでもない」


心を平常心に保とうと一呼吸おいて箸を持ち、ちらりと隣を見ると赤司先生が怪しげに笑ってこちらを見ていた。

その手はやめる事を知らない。

歩や食堂に入ってきた職員の人たちにバレないようにバレないようにと心の中で呟きながらうどんを食べた。


「ごちそうさまでした」

「ごちそーさま」


味わいながら食べることができず口にかっ込んだだけの食事が2人同時に終わりすぐに席を立つ。

赤司先生は名残惜しそうに行くのか、と言ったが浅く会釈して食器を戻しに行った。









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