誠凛寮の決まりであるゲームは1人1時間をきっかり守った2人は水戸部を連れて2階へ上がる。
伊月が入れてくれたコーヒーもすでに飲み干し、コップだけさっと洗って日課であるハーブや家庭菜園の水遣りを始める。
ハーブもすくすく育ち、今度このハーブを使ってハーブティーや香草焼きでも作ろうかと考えていると、楽しそうな声が奥の方で聞こえた。
「降旗、ナイスシュート!」
「へへっキャプテンに教えてもらっただけあるぜ!」
玄関の反対側には結構広いスペースがあり、日向はそこにゴールネットを立ててよく練習をしている。
そこは誰でも使っていいため休みの日などに降旗、福田、河原の1年コンビはよく利用している。
先輩たちや同じ1年の黒子、火神たちが活躍しているのを見て次は自分たちもと意気込んでいるようだ。
「大分上手になったね」
「わっ!水無月さん!?」
降旗はいきなり声をかけられ、驚いてしまいボールを落とす。
驚かせてごめんね。と水無月の足元に来たバスケットボールを降旗に投げる。
「入学した時より上手になったね。次の公式戦でれるかも」
「いっいやぁそれは無理っすよ!」
「そうそう。まだ黒子たちだけならいいけどオヤコロのあの人たちもいますし」
「2年の先輩方もいるからまだまだ無理です」
「そうかなぁ〜。確かに赤司くんたちも上手だけど3人も努力してるし全然大丈夫だよ」
ねっと3人の手を握る。
3人は耳まで真っ赤になって、俯いた。
そんな様子を2階から日向と相田が見ていてふふっと笑っていたのは4人も知らない。
夕食前の買い物時午後4時すぎぐらい。
水無月は財布と大きなエコバックをいくつか持って部屋を出る。
車の方へ向かうと今日の荷物持ちたちが待っていた。
「今日は日向くんと木吉くんか。頼もしい2人だ」
「けっ俺だけでも全然いけるんすけどね」
「そんな悲しい事言うなよ日向〜。くじなんだからしょうがないだろ?」
日曜は買い出しの日で、買い出しの荷物持ちはその日の阿弥陀で決まる。
滅多に乗れない水無月の車で1時間ほどデート気分が味わえるためこの阿弥陀は皆必死だ。
ちなみに先週は水戸部と相田。
水無月の自前の車に乗り込み安い大型スーパーへと向かう。
なんせ食べ盛りの男子高校生の食事なのでできるだけ安く量をたっぷりにしたい所。
水無月の後ろで日向と木吉は1つずつカートを押して水無月が選んだ食材を入れていく。
「あら。水無月ちゃん今日は強そうなボディーガードね」
「ボディーガードじゃないですよ。俺の可愛い寮生の子なんですから」
「今日玉子がタイムセールらしいわよ。もうそろそろ始まるわ」
「えっそうなんですか。わざわざありがとうございます」
この光景はこのスーパー内では有名で、買い物に来るおばちゃんなんかによく声をかけられる。
なにせ買う量もそうだが、3人が皆イケメンなため視線が集中する。
水無月もその中に入っている事は本人のみ気づいていないようだが。
「水無月さん。これ安いですよ」
「本当だ。じゃあ木吉くんこれ2つ入れて」
「わかりました」
「・・・水無月さん、いつもどっち使ってましたっけ?」
「それは左の方だよ。右も美味しいんだけど値段と量が見合わないから」
高校に入るまで食卓というものに全く興味を示さなかった2人。
買い出しに行くようになって少しずつではあるが食品などに興味を持つようになった。
これもあれも水無月に美味しいご飯を作ってあげたいという気持ちからなのだが。
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