こっちはこういう時でしか会えないのだから少しぐらい話させて欲しい。
できれば頭を撫でてもらってぎゅって抱きしめて欲しい。
できればxxxxとかしたいわぁ〜。
「・・・おい、今吉。お前の心の声がダダ漏れだぞ」
「そういう笠松かてそうやないか。抱きしめてもらいたいんや。ふーん」
「てっめぇー!」
「すいません、遅れましたー!」
今すぐにでも掴みかかりそうな瞬間、緊張感が解きほぐされるような声が大広間に広がる。
待ちわびた水無月とおまけの日向がやってきたのだ。
「待ってましたよ、水無月さん。ささこっちへどうぞ」
「ん?うん。わかっ・・・」
「赤司ぃ。そこはお前のトコの寮母さんの席だろ?どさくさに紛れて隣座らせようとしてんじゃねーよ、ダァホ」
さりげなく水無月の腰に手を回し隣に座らせようという赤司の計画は日向によって阻止される。
チッと赤司は舌打ちし自分の席に座る。
監督生皆が感じた。
今日の日向のクラッチタイムが入る時間が早すぎるのではないのかと。
その理由を知っている人は本人である日向のみぞ知る。
日向と水無月は自分の席に座って会議は始まる。
まずはここ最近の治安や学校内の事に始まり、寮内での報告。
光熱費などの金銭的問題など。
寮の財布を握る寮母や寮父の意見を多く取り入れて話がどんどん纏まっていく。
とくに水無月の意見は全員一致で了承を得られてすぐに通る。
他の寮母寮父も何もその事で文句は言わない。正しい事しか言っていないのだから。
ようやく会議も佳境で他に言い残した事はないか、と今回の司会である赤司が周りに目配せをする。
「赤司。1つ聞きたい事があるんだ」
「なんでしょう日向さん」
日向は立ち上がりコホンと1つ咳払い。
そして大坪に目線を向け口を開く。
「大坪さん。水無月さんに手編みのマフラーあげたって本当ですか?」
「・・・ああ。それがどうしたんだ、日向」
手編みのマフラー・・・?
水無月さんに?
ザワザワと話し声があちらこちらで広がっていく。
「それは本当なんですか。大坪さん?」
赤司は笑いながら大坪の方を見るが目は笑っていない。
むしろ手元に握られている鋏をしまえよ、と隣に座る笠松は冷や汗を垂らす。
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